歯科における無痛治療について!
歯科治療を受けた経験のある方にとって、歯科治療中の痛みは「イヤ」なもので、歯科へ行こうと思っても、痛みを思い出すと足が向かない原因の一つでもあります。
現在、麻酔液の進歩や良い抗菌薬のおかげもあり、麻酔を行うことによって、痛みをほぼ感じずに治療できます。
しかし、その麻酔の注射自体が「痛い、怖い」という声を良く耳にします。
ここでは、痛みの少ない麻酔注射方法についてご紹介いたします。
①表面麻酔の使用(注射の前に、軟膏の様な物を1分くらい置くことで、除痛できます)
②麻酔液を適温に温める(体温近くまで温めることで、除痛できます)
③細い注射針の使用
④電動麻酔注入器の使用(麻酔液の注入する圧を軽減でき除痛できます)
現代の歯科医院では、このように痛みが少なく、患者様が楽に麻酔できるように、種々の努力をしています。
ただ、今後行われる治療の説明など、医師と患者様とのコミュニケーションが良好なことが安心した治療を受けられる要因の一つでもあります。
歯科医院でも説明の努力はしていますが、何か不明な点や疑問点などあれば先生やスタッフに聞いて頂き安心した治療を受けて頂くのをお勧めいたします。
人工歯根(デジタルインプラント)について
インプラントとは医療目的として体に埋め込む器具のことをインプラントとよびます。
体の骨にひびが入ったり、骨折をした際に骨を支えるため使用するボルトやリウマチなどで曲がった骨を正常の位置に戻す際に使用するボルトがあります。
歯科で使用されるデンタルインプラントの素材としては、ほとんどのメーカーでチタンが採用され、チタンの性質として金属アレルギーがでにくく、身体に対して有害な作用を及ぼしにくく海水や酸に対して高い耐蝕性を示しているため、心臓のペースメーカーや、人工関節などで使用されている素材なのです。
デンタルインプラントの特徴としては、失った歯の部分にチタン製のデンタルインプラントを埋め入れて、歯本来の機能や見た目を取り戻す治療法のことをいいます。
失った歯の部分を治療しますので、周囲の歯に負担をかけることがなくこれまであった歯と同じような役割を果たしますので噛む力を分散させ、残っている自分の歯を守ることにもなります。
入れ歯のように噛む力が健康な状態に比べて20%程度に落ちたり、ブリッジの様に健康な歯を削る必要もありません。
しかしデンタルインプラントもデメリットがあり、インプラントを埋め入れる外科手術を伴うことや、他の治療に比べて治療期間が長いこと、保険が適用されないため費用の負担が大きいなどがあります。
また手術を受けるのに困難な方もいて、インプラントを埋め込んだ部分は骨の成長が妨げられるため、成長過程にあるかたはインプラント治療が出来ません。
また免疫力が著しく低下している方や、高度の糖尿病の方、一部の骨粗鬆症の薬を服用している方も困難な場合があります。
インプラント治療の利点と欠点を理解した上で治療法を選択することをおすすめします。
インプラント治療にご興味がある方は歯科医院にて相談を受けてみることをお勧めします。
前歯の被せ物(差し歯)について
今回は、前歯の被せ物についてお話しいたします。
現在保険で使用が認められているのは、硬質レジン(樹脂)という材料で、治療費が安いというメリットがありますが、いわゆるプラスチックなので時間が経つにつれて段々と変色してきたり、歯ブラシにより擦り減って光沢がなくなったり、吸水性(水を吸う性質)があるので臭いが付くというデメリットがあります。
このデメリットを補う意味で使用されている材料にセラミック(陶材)があります。
セラミックを使用する被せ物で一般的なのは、メタルボンド(陶材焼付鋳造冠)という物で、中身は金属ですが、外から見える部分にのみセラミックを張り付け(焼き付け)た被せ物で、強度に優れ見た目も良く擦り減ることもありません。
メタルボンドと違うセラミックだけの被せ物(オールセラミッククラウン)もあり、冠全体がセラミックでできていて、永年の使用にも変色せず、健康的な白い歯の輝きで天然歯の美しさを保ちます。
次に最近新しい材料として使用されてきたものにジルコニアがあり、ジルコニアセラミッククラウンとして奥歯やブリッジにも使用されてきています。
ジルコニアは透明でダイヤモンドに近い高い屈折率を有することから、“模造ダイヤ”とも呼ばれ、宝飾品としても用いられているのはご存知のことと思います。
ジルコニアセラミッククラウンは、メタルボンドの中身の金属の代わりにジルコニアを使用したもので、見た目(審美的)にはオールセラミッククラウンに多少劣るものの、土台の歯(または金属)の色が透けるのを防ぐ効果があります。
その他の被せ物としては、ハイブリッドセラミッククラウンというものがあり、セラミックとレジンを混ぜた材料で、オールセラミッククラウンよりやわらかく咬み合う歯に対しては優しいのですが、色調は多少劣り、時間が経つと変色してきます。
今述べてきたように保険適応は硬質レジンだけですが、それぞれの材料に特徴があり、咬み合わせの状態で使用する材料も変わってきますので、担当の先生に相談し健康な口もとを手に入れてください。
歯磨きの補助用具について
みなさんは毎日、歯を磨いていますか?
ほとんどの方が磨いていると答えるでしょう。
歯磨きの他にデンタルフロス、歯間ブラシなどの補助的清掃用具を毎日使っている方はどうでしょうか?
もしかしたらあまり多くはいないかもしれません。
歯ブラシを使う他になぜ補助用具が必要なのでしょうか。
歯垢や食べカスは目に見える歯の表面や裏側だけでなく歯ブラシがなかなか届きにくい、歯と歯の間にたくさん溜まっていきます。
もし、適切な補助用具を使わず毎日、歯と歯の間に食べカスが溜まり続けたらどうなってしまうでしょうか。
おそらく、その部分から虫歯や歯周病や口臭が引き起こる事が考えられます。
歯ブラシだけで磨いた場合は約50%程しかプラークを除去できませんが、そこにフロスなどの補助用具を併用することでプラーク除去率は90%まで上がります。
プラークの細菌は24時間たたないと悪さをしないのでゆっくりと時間の取れる夜の歯磨き時間に補助用具を使った清掃を行うと良いでしょう。
デンタルフロスは、弾力のある細い繊維の束でできている糸を歯の間に入れて繊維の束で歯の間の汚れを巻き取るようにして取り除く道具です。
糸だけのタイプとホルダー付きのものと2種類あります。
ホルダー付きのものは奥歯に使いやすいので、初心者の方にオススメです。
歯間ブラシは、歯と歯の間に隙間が大きく開いている場合や、ブリッジの所などに使用すると効果的です。
歯間ブラシにはL字に曲がったタイプとストレートタイプがあります。
最初は難しく感じますが、慣れれば簡単に行えるようになります。
太さ色々ありますので自分に合ったサイズを使いましょう。
合わないサイズを使ってしまうと歯茎を傷つけることがあります。
事前に歯科医院で自分のサイズを選んでもらって正しい指導を受けましょう。
今日から、歯ブラシの他に補助用具をプラスしてみてはいかがでしょうか?
親不知(おやしらず)とは
親不知(おやしらず)が痛くなったり、親不知を抜いたけど大変だったと言った話を耳にする事があると思います。
人間の歯はだいたい生後半年ほどで乳歯が生えてきて5~6歳ころから徐々に永久歯に生え換わり13歳頃になると永久歯の歯並びが完成します。
ところが20歳頃以降にかけて、前から8番目の歯が生え始めることがありこれを親不知と呼びます。
正式名称では「第三大白歯」といいますが、一般的には親不知という呼び方が浸透しています。
どうしてこんな名前がついたのかというと一つは18歳から20歳前後の親元から離れる頃に生え、親が歯の生え始めを知らないという説や、乳歯が永久歯の親と考えると、親不知には対応する乳歯が存在しないので、親がない歯ということで親不知と命名されたという説もあるようです。
親不知が痛くなる原因としては一番後ろに生えてきて、歯ブラシがしにくいところにあることも原因になって他の歯に比べると虫歯になりやすく、また炎症もおこりやすいのです。
軽い炎症が起こっていても体調の良い時には自覚症状はほとんどありませんが、忙しくて疲労がたまっていたり風邪をひいて体調を崩したりしたときに炎症が悪化するのです。
炎症が強い時は歯のまわりだけでなく、喉や顎の関節の周囲も炎症を起こしている為に口を開けることも難しいこともあります。
症状の程度にもよりますが最初にレントゲンで親不知の位置を確認し消毒を行い、当日は処置を行うことが難しいので薬にて細菌の増殖を抑えるため消炎を行います。
その後炎症が治まったら歯を抜くことになりますが、特に下顎の親不知は横を向いてしまっているときや骨に埋まっているときがあります。
その場合は、歯を分割したり歯の周囲の骨を除去しなければならなかったりする為、抜歯後に腫れや痛みが出やすいのです。
親不知に痛みが出た時は、我慢せずに一度歯科医院を受診してみてください。
昨今のインプラント治療について
ここ数年のインプラント治療は治療法、製品の充実とともに様々な症例に対して格段の進歩を遂げています。
保険適用はされませんが、従来のブリッジや入れ歯のように残存歯に負担をかけずに欠損歯を補えるインプラント治療(費用は、数十万~数百万と症例や材質によって異なります)を選択される方も徐々に増えています。
一方で、歯科医師の技術的な問題や、治療に対しての説明不足による患者さんとの意識の相違によって、トラブルも増加しています。
こういった問題を避けるために術前の診査・診断・コンサルテーションが大事になってきます。
歯科医師が考える治療と患者さん自身が希望する治療は必ずしも一致しているとは限りません。
インプラント治療に限らず、ご自身が受ける治療に対してしっかりと理解し納得してから治療に取り掛かることが重要です。
歯は残っていた方が良いのか?
厚生労働省が推進している8020運動は、8020達成者(80歳で20本以上の歯を有する人)を増やそうというものです。
平成23年の歯科疾患実態調査で8020達成者は38.3%であり、平成17年の調査結果の24.1%から増加しています。
これは過去最高の数字であり、歯を残そうとする意識が国民の間に根付いてきていることが裏付けられていると言えます。
しかし、依然として過半数以上の人が達成できていないわけです。歯を無くす2大原因は虫歯と歯周病です。
患者さんの中には「歯が無くなっても入れ歯があるからいいや」「人生長くないから歯を残してもしょうがない」など、おっしゃられる方がいらっしゃいます。
はたして歯は残さなくてもかまわないものなのでしょうか。
興味深い研究(※注1)で、歯の残っている数と栄養との関連を示す報告があります。失った歯の数が多い人ほど、蛋白質、脂質、カルシウム、鉄、カリウム、カロテン、ビタミンA・C・E、食物繊維の摂取量は少なく、逆に炭水化物については摂取量が多いという結果が示されました。
つまり、歯の少ない人は咀嚼しやすい菓子類と米飯類の摂取量がむしろ多かったわけです。
これでは糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まってしまうと考えられます。
一方で残せない歯を無理に残すのはかえって良くない結果となり、その場合は歯科医院で抜歯する必要があります。
そうならないためにもしっかりと歯をケアして、歯を少しでも残すことで病知らずの長寿を目指したいものです。
(※注1)歯の保有状況と食品群・栄養素の摂取量との関連(安藤ほか)
歯の進化について
ときしらずといえば、魚や花を連想するように、「親しらず」は、歯のことだとほとんどの方がわかるほど、一般的に使われている言葉です。
専門的には第三大臼歯あるいは智歯といい、骨の中で形成される時期も遅く、最も進化による影響が出やすい歯です。
進化により顎が小さくなると、最も遅れて出てくる智歯は、その出る場所がなくなり、歯冠の一部のみが頭を出し、その他の歯根は氷山のように歯ぐきの中に深く深く埋ったままになります。
その一部露出した部分に食物がたまり、細菌が繁殖し、智歯の周りの骨にまで拡がると「親しらずがハレタ」という状態になり歯医者さんに駆け込むわけです。
また、歯自体も進化の影響を受け異常な形をしていたり、小さくなってなくなってしまう場合も少なくありません。
映画「ジョーズ」に出てくるあの忌まわしいサメは恐怖映画の主人公にされるほどするどい歯を持っています。
その歯は一生の間、何度も生え替わります。
だから常にとがった鋭い歯でいられるわけです。
その他にもサメは歯に関して別な重要な面を持っています。
サメハダといわれるように、サメの体を包んでいる皮には硬いザラザラ感を持ったウロコ様のものがあります。
このサメのウロコが歯の元祖であるといわれているのです。
よくみますとサメのウロコには、われわれの歯のエナメル質や象牙質に相当する部分があり、動物の歯の大元締であると考えられております。
人間が持っている歯の形は、前歯は切るのに適した肉食のための形、奥歯はすりつぶすための臼(うす)の形をしているため草食に適しております。
しかし、肉食獣に比べると、切るための筋肉も弱く、また、草食動物の牛などに比べると食道から直腸までの消化管の長さが短く、「草食動物」よりは「穀物食動物」といわれています。
人間の永久歯は、サメと違い生え替わりませんので、「親しらず」といえども、できるだけ大切に残しましょう。
象牙質知覚過敏症について
言うまでもなく、歯科の2大疾患といえば「う蝕(むし歯)」と「歯周病(歯槽膿漏)」ですが、このどちらにも属さない象牙質知覚過敏症についてお話ししたいと思います。
この疾患は、最近テレビのコマーシャルなどでも見たり、聞いたりすることがあるので憶えておられる方も多いと思います。
いったい象牙質知覚過敏症とはどういう病気なのでしょうか?
そもそもは「温度、乾燥、擦過、浸透圧、化学物質などの刺激によって生じる短く鋭い痛みを特徴とし、歯質の実質欠損など他の病変では説明できないもの」と定義されますが、冷たい物、温かい物(特に冷たい物による刺激)、甘い物、酸っぱい物、また歯ブラシの際の刺激に対して「しみる」という症状を呈します。
これらが高ずると「痛み」になります。ちょっと専門的になりますが、どうしてこういうことが起こるのかというと、歯の表面を被っているエナメル質や根元の方にあるセメント質が喪失し、象牙質が露出して、その表面に歯の神経と連絡している象牙細管が開口し、そこに先に述べた刺激が加わって痛みを発症するとされています。
それでは日常でのセルフケアはできないのでしょうか。
ひとつには歯磨剤の選択があります。これらの中には、先ほど述べた象牙細管を封鎖する役目の物(乳酸アルミニウム配合)、歯の神経の知覚鈍麻の役目の物(フッ化物配合)、歯の神経の伝達をブロックする役目の物(硝酸カリウム配合)があります。使用の際には研磨剤非配合の物をお勧めします。
次に食生活では酸性のものを控える(例えばワイン、コーラ、オレンジジュースなど)。
3つ目は、適切な歯ブラシの仕方です。
毛先はラウンド型や極細毛のもので歯の表面を拭う感覚で行ってください。
昨今話題になっている音波ブラシも有効でお勧めします。
通常では2〜3週間位で症状が治まってくるものと思われますが、改善されない場合も多々あります。
痛みの感受性の亢進は歯髄炎(歯の神経の炎症)につながります。
そのような時は、歯科の先生に相談し適切な治療を受けられることをお勧めします。
電動歯ブラシについて
電動歯ブラシと一口に言っても種類も値段も様々で、どれを選んで良いのか分かりづらいと思います。
電動歯ブラシは大きく分けると3つの種類に分けられます。
高速電動歯ブラシ、音波歯ブラシ、超音波歯ブラシの3つです。
高速電動歯ブラシはブラシが横や縦に振動又は回転するタイプです。
ブラシの振動数は概ね8000回/分前後のものが多く、手で磨くより汚れの除去の効果は高いと思います。
ただし歯と歯の境目や歯と歯茎の境目まできれいに磨けるかというと、少し物足りないという気はします。
次に音波歯ブラシです。高速電動歯ブラシとの違いはなんといっても歯ブラシの振動数です。
音波ブラシの多くが30000回/分前後です。
単純に振動数が4倍も違うため汚れを除去する能力が高いと思われます。
毛先が高速で振動するので軽く当てるか若干浮かせる様な感じで磨かなければいけない為、多少テクニックがいります。
もう一つの超音波歯ブラシですが、こちらは他の電動歯ブラシのように毛さきがブルブルと派手に動くことはありません。
160万ヘルツの超音波を発生することによって、歯に付着した細菌を破壊するそうです。
超音波で歯の汚れが浮きあがったあとは普通の歯ブラシのように動かして汚れを除去する必要があります。
よって、超音波歯ブラシを口に入れたまま待っていても汚れが落ちるわけではありません。
以上のように便利な電動歯ブラシですが、これらに共通した弱点があります。
手磨きの歯ブラシに比べてヘッドがでかくて分厚いことから、奥歯の更に後ろなどもともと磨きにくい場所に関しては手磨きに劣ります。
また、歯と歯の間の汚れに関して効果があるという製品でも、その効果はあくまで補助的なものと思います。
ですから歯間ブラシやフロスを使わないでも良いというわけでもなさそうです。
皆さんもご自分の生活に合わせた使い方を試されてはいかがでしょうか?