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運動療法の心得

 ようやく暖かくなってきましたね。冬に増えた体重を、そろそろ戻さなければと思っている方も多いはず。ただ、どんな運動をどの位すればよいのか? なかなかわかりません。

 目標は1日30分毎日できる運動がベストです。運動強度としては、動いているときに話ができる程度の運動から始めましょう。

 第一に、自分のできそうな目標を決めましょう。

 今まで運動していない人がいきなり30分のウォーキングは30分という時間を作ること・急に運動を始めるということで難しいと思います。まずは、一日二回、3~5分の運動を週4回行うことを目標に始めてみませんか?

 ストレッチから始めても良いですし、「お買い物は歩いていく」「駐車場はできるだけ遠くに車をとめる」「デパートはエスカレーターを使っても最後の一階分だけは階段を利用する」などから気軽に始めてみましょう。

 第二に、完璧主義は禁物です。例えば、「先週は毎日歩かなかった。私はだめだ」と考えるのではなく、「先週は4日歩けた。少しずつだが、目標に向かっている」と前向きに考えましょう。

 また第三に、運動をやりすぎないことです。初めは、やる気満々で体重も減ってすごく楽しく行えますが、そのうち運動しすぎるとご褒美が欲しくなります。

 例えば30分ウォーキングしたとします。この程度の運動でも、汗はかきますし、疲労感もありますよね?

 この時、がんばったご褒美に「大福もち1個」くらいなら大丈夫と思うかもしれませんが、この時の運動は100キロカロリー位であり、大福一個は250キロカロリー前後あることから、せっかく運動したのに逆にカロリーオーバーになってしまいます。

 また、スポーツ飲料も、ペットボトル500ミリリットル当たり40~130キロカロリーあり、飲む前にチェックしないとカロリーオーバーということもありえます。ご褒美が欲しくなるような運動ではなく、そのこと自体を楽しめる程度の運動でいきましょう。

 また糖尿病の方は、低血糖の備え~ブドウ糖の携帯と、食後に運動することを忘れずに!


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

ワクチンのシーズンがやってきました

 いよいよ、師走も近づいてきました。インフルエンザワクチン接種は、お済みですか?

 「去年打ったから今年は大丈夫!」と思っている方はいませんか?

 インフルエンザは、毎年はやるウイルスのタイプが異なるため、毎年接種すべきワクチンです。函館市民で六十五歳以上の方は、市の助成があるため千円で接種できます(収入に応じて無料になる手続きもあります)。まだ未接種の方は、十二月初旬までには済ませることをお勧めします。

 また、最近では肺炎球菌(はいえんきゅうきん)ワクチンを接種する方も増えています。「肺炎球菌って?」聞き慣れないと思います。健康な方でも風邪をこじらせ肺炎になることがあります。また、高齢になればなるほど、その死亡率も高くなります。この肺炎の原因の約三十%を占めるのが、肺炎球菌なのです。

 また、この肺炎球菌が最近では薬の効きにくい耐性菌に変わってきているそうです。肺炎球菌による肺炎を予防するのが肺炎球菌ワクチンです。

 どういう方に勧めるのか?

 ―やはり高齢で、慢性の心臓病・呼吸器疾患〔肺気腫・喘息(ぜんそく)など〕・腎疾患・肝疾患・糖尿病の方にお勧めします。肺炎球菌ワクチンは、通常、一回の接種で約五年間ほど有効であり、約八十%の肺炎球菌感染症に効果が期待できます。インフルエンザワクチン接種後一週間以上経過すればいつでも打つことができます。ただし二歳以上で脾臓(ひぞう)を摘出した方のみ保険適応となっており、ほとんどの方は実費で接種することになります。詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。

 また、インフルエンザワクチンは、インフルエンザにしか効きませんし、肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による感染症にしか効きません。ワクチンは万能薬ではありませんので、これからのシーズンは、ワクチンを接種しても、風邪の予防(人込みを避ける、外出後はうがい・手洗いを励行する)等は続けてくださいね。


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

たかが脂肪肝(しぼうかん)されど脂肪肝

 メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)については、最近話題になってきているので、皆さんも知識があるかもしれません。ウエストが男性八十五cm・女性は九十cm以上ある方で、次の項目の二個以上にひっかかる方が該当します(●高脂血症●高血圧●高血糖)。

 成人の有病者は千三百万人と推定されています。少し太ってきて、ちょっと血圧が高くなり、中性脂肪や血糖が少し高い状態が重なることで、脳梗塞(こうそく)・心筋梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすくなる状態です。

 実は脂肪肝も、このメタボリック症候群の仲間とみられています。脂肪肝―ご存知でしょうか? B型・C型肝炎のようなウイルスによるものではありません。最近太ってきて、コレステロールや中性脂肪が上がり、健康診断で「脂肪肝ですね」と言われたことはありませんか?

 現在、日本の脂肪肝患者は八百万人と推定されています。この脂肪肝の中には、お酒を飲まないのに徐々に病気(脂肪肝)が進行し肝臓の働きが悪くなり、肝硬変になるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれる恐ろしい病態も紛れ込んでいます。この病態の自覚症状はなく、今のところ脂肪肝である人の、どんな方がNASHに進行していくのかわかっていません(インスリン抵抗性のある方が多いと言われています)。

 ですから、たかが脂肪肝として放置していますと、あるとき「かなり肝臓が弱っています」と言われることになるかもしれません。また、診断も単なる血液検査だけでは不十分なので、肝生検(かんせいけん)という肝臓の細胞を調べる検査が必要になります。治療についても、特効薬はありません。それでは、どうしたらよいのでしょう?

 基本的には、生活習慣病ですので、脂肪肝と言われた段階でしっかりとした食事療法・運動療法を行い減量することです。

 「血液検査の結果もちょっとしか高くないし、そのうち何とかなるだろう」というのはだめですよ。


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

糖尿病とこれからの季節

 「日本人の糖尿病は、お盆の時期とお正月の時期に悪くなる」という有名な報告をしたお医者さんがいます。
 これから、忘年会・クリスマス・お正月を迎えます。食事療法をしなければいけない糖尿病の患者さんにはつらい季節がやってきます。

 誰もが、おいしいごちそうを目の前にして挫折するものです。

 そんな時どうしていますか?

「あ~あ、昨日食べ過ぎちゃったから、今日は食事を抜こう~」なんてしてませんよね?
 内服治療やインスリン治療中の患者さんは、このようなことをしてはだめですよ!

 食事を抜いたり、極端なカロリー制限をすると低血糖になったり、朝はいいのですが、昼や夕食時間に非常に空腹感が強くなってまた食べ過ぎてしまいます。それを繰り返すと、どんどん食生活がうまくいかなくなり、糖尿病が悪化します。

 また、特に治療中の人はアルコールにも気を付けましょう。
 糖尿病の治療中にアルコールを多量に飲んで低血糖になる―というのは、非常に危険です。意識を失い、生死をさまようことだってあります。
 また、果物の摂りすぎにも気を付けましょう。

 こたつでミカンなんて、気がついたら一日に五~六個食べてしまいますが、糖尿病の食事療法では、果物は一日一単位~ミカンなら中くらいの物を二個、リンゴやナシは、一日半分。ブドウは、皮と種を含んで一八〇グラムです。
 糖尿病の食事療法で食品交換表がありますので、これを見て、食べ過ぎに注意し、自分の摂取カロリーに気を配る癖を付けたいものです。

 この季節は、食べ過ぎた日のことは水に流して、翌日からは主治医に教えてもらった食事量を思い出してきちんと定められたカロリー通り摂りましょう。


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

自宅で血圧を測りましょう!

 病院や健康診断でドキドキして測る血圧~これだけでは高血圧の診断・治療は不十分です。病院だけで血圧測定をしていると、白衣高血圧と呼ばれる病院で測定するときだけ高くなる現象や、逆に仮面高血圧と呼ばれ、病院では正常であるが自宅で血圧が高い状態を見逃してしまいます。その結果、正しい血圧を知らないで薬を飲むと血圧が下がりすぎたりしてめまいを訴えたり、逆に血圧が正常だと思っていても実は不十分だったということになりかねません。

 2004年の日本高血圧学会のガイドラインでも、この家庭血圧測定が大きくとりあげられています。装置は上腕カフ・オシロメトリック法を用いたものが推奨されています。

 測定部位は、手首や指先のものではなく、上腕部分で測定するものが良いです。測定時間は朝と夜の1日2回。朝は、起床一時間以内、排尿後、服薬前、朝食前に座位1~2分安静にしてから測定。夜は、就寝前に座位1~2分安静にしてから測定します。腕の高さは、枕やタオルを使ってできるだけ心臓の高さに合わせましょう。測定回数は、朝晩少なくとも1回ずつ、できるだけ連日測定しましょう。ここで問題なのは、測定回数が決まっていないことです。朝1回だけ測るのか、2~3回測定して平均値を出すのか?

 この疑問については、未だ学会でも答えが出ていません。ですので、血圧の数字を直接高い低いと一喜一憂するのではなく、朝と晩でどちらが高めか? いつもより高くなっているのか? というような傾向を見ることが大切です。

 また、自宅で測定する血圧で、135/80mmHg以上は確実な高血圧として降圧治療の対象とする、となっています。昔に比べ血圧を低めに維持することが非常に大切であるというのが現在の高血圧治療の考えです。僕が医師になったときは血圧が160/90mmHgを超えたときから治療開始することになっていましたから意外に厳しい数字ですよ!

 「血圧が高めだけど…病院へ行くのは…」というそこのあなた!

 まずは、自分で血圧を測ってみてはいかがですか?


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

糖尿病の気がある、と言われていませんか?

 日本人は、欧米人に比べインスリン分泌が弱く糖尿病になりやすいといわれ、今や40歳以上の5人に1人は糖尿病かその予備軍であるといわれています。背景としては、ここ10年くらいの総カロリー摂取量は変わらずに、自動車の保有台数と脂肪の摂取量が増えています。つまり、食事量ではなく食事の質が変化し、かつ歩かなくなったことが一因といえます。

 糖尿病はどんな病気でしょうか?血糖値が高くなる病気なのですが、全身の細い血管を壊していく病気と思って下さい。長い年月をかけ、あまり症状を出さずに、徐々に血管を傷害していきます。脳に起れば脳梗塞、心臓に起れば狭心症・心筋梗塞、眼に起れば眼底出血のため視力低下し、腎臓に起れば腎不全となり透析が必要になります。これが、サイレントキラーと呼ばれるゆえんです。

 それでは、どうすれば糖尿病を早期に発見できるのでしょうか?糖尿病の初期には自覚症状はありませんので、まず採血して調べることです。その採血にもコツがあります。糖尿病の初期の段階では、空腹時には正常で、食後の血糖値だけが高くなることが多いのです。その為、糖尿病が心配で受診される際は、食後1~2時間後の血糖値を調べてもらって下さい。そこで少し高いようならば、改めて糖尿病の精密検査を受けましょう。

 糖尿病の精密検査は、糖負荷試験と呼ばれ、空腹で行う検査です。空腹で受診し、空腹時に血糖値を取り、その後甘いブドウ糖液を飲んでもらい、30分後、1時間後、2時間後にそれぞれ血糖値を測定する検査です。合計4回採血され2時間かかる検査ですが、これで糖尿病かどうか診断します。

 境界型と呼ばれる糖尿病と正常者の間に位置する人=糖尿病予備軍であれば、体重を5%程度低下させ、1日30分運動すると糖尿病になるリスクを減らすことができます。

 最近太り気味で糖尿病が心配な方は、まずは食後血糖から調べてみませんか?


Text by はら内科クリニック 原 信彦(  「」掲載)

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