健康診断の結果を確認していますか?
健康診断などで、血液検査や尿検査を行うと、普段あまり見慣れない検査項目の羅列で、見どころが分からない、と思ったことはありませんか?
腎臓の病気は、比較的ゆっくりと経過する場合があり、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、検査をして初めて発見されることもあります。
検査方法は腎臓病の種類によっても異なりますが、一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査は、慢性腎臓病(CKD)の早期発見のきっかけになり、隠れている腎臓病を見つけることができます。
尿検査では主に尿中にたんぱく質や血液が漏れ出ていないかを検査します。
通常、正常な腎臓であれば、尿中にタンパク質が出ることはありませんが、腎臓に何らかの障害があると、体に必要な成分であるタンパク質が尿中に排泄されてしまいます。
また尿中に血液が混ざっている場合、腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)などに何らかの病気があることが疑われます。
運動等でたんぱく尿や血尿が誘発されることがありますので、再検査が必要です。
血液検査では、「血清クレアチニン」をみます。「血清クレアチニン」は、血液の中にある老廃物の一種です。本来であれば、尿中に排出されますが、腎臓の働きが悪くなると、尿中に排泄されずに血液中にたまっていきます。そのため「血清クレアチニン」の値が高いということは、腎臓がうまく働いていないと判断できます。
この「血清クレアチニン」の値を年齢と性別で補正した値がeGFR(推定糸球体濾過量)です。
eGFRは腎臓が体に必要ない老廃物を尿中へ排泄する能力を示していて、このeGFR値が低いほど腎臓が悪いということになります。
尿検査でタンパク質や血液がみられたり、血液検査でクレアチニン値やeGFR値に異常を認めるような場合は、症状はなくとも腎臓の病気が隠れている可能性がありますので、最寄の医療機関にご相談ください。
思春期の貧血
思春期のお子さんが慢性的な疲労や集中力低下を起こしていることはないでしょうか。
また中学に進学してから学力が伸び悩んでといったことも・・・。
その場合は貧血が隠れている可能性も考えなくてはなりません。
思春期は心も体も大きく成長する時期です。
そのため、酸素を全身に供給するために血液もこれまで以上に増やさなくてはなりません。
ところが女の子は月経も始まりますから出血により鉄分を失ってしまいます。
しかも不適切なダイエットなどをすると更に貧血も進行してしまいます。
思春期の女性のおよそ10%が治療を必要とする貧血、注意が必要な予備軍は20〜30%にものぼると考えられています。
思春期の貧血は意外と多いのです。
鉄分はもともと体内に吸収されにくい栄養素です。
鉄分は2種類あり、肉類や魚介類に含まれているヘム鉄と野菜類に含まれている非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は吸収力がよく食べた量の15〜25%が吸収されます。
非ヘム鉄は吸収率は5%と低いのですが、ビタミンCと一緒にとると吸収されやすくなります。
ほうれん草などの青菜類やブロッコリーなどは鉄とビタミンCを両方多く含むのでお勧めです。
また思春期の貧血では「スポーツ貧血」というものがあります。
これは運動によって何度も繰り返し激しい衝撃が加えられることで、赤血球が破壊されて起きる溶血性貧血という状態です。
何度も足の裏に強力な衝撃が加えられるスポーツと言えば長距離走や剣道、バスケットボールやバレーボールなどです。
思春期にある中高生は部活動での運動も活発になるためにスポーツ貧血も考慮しなくてはなりませんし、その場合は運動の休止をすることが貧血の改善につながることがあります。
運動を休みたくないという気持ちもあるかもしれませんが、貧血を改善することで結果としてスポーツの記録向上につながるかもしれません。
脱メタボ宣言
これからの季節、忘年会・クリスマス・お正月と行事が満載です。
また雪が降ってくると外での運動もできなくなります。
今年も懲りずに年末脱メタボ宣言しましょう。
①運動 脈拍が100~120回/分、10~30分程度の運動がオススメです。
②減塩 味噌汁をのむ時は漬け物を食べない。漬け物を食べたときは味噌汁を飲まない。
いずれも3食のうち1回だけにしましょう。
③お酒 日本酒なら1合、焼酎半合、ビールは中瓶1本、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯程度で我慢我慢。
④体重管理 まずは毎日測りましょう。
1日1~2回の測定を毎日続けることにより、自分の体重の把握・体重の増減が分かり、その時に食事を見直す機会ができます。1日で1㎏増えたら「何で? どうして?何食べた?」自問自答を繰り返すことにより自分の食事の問題点がわかります。同様に、毎日食べたものを寝る前に思い出してメモしてみましょう。意外に朝からの食事を全て間食も含め思い出すのは難しいものです。若い方なら食べるたびに写メを撮ってみましょう。1日に意外に食べ過ぎていることに気がつきます。現体重の3%の低下で血糖値・中性脂肪・血圧の低下が認められます。60㎏なら1.8㎏です。
また5.5%の体重減少では、なんと糖尿病予備軍の方の糖尿病発症率が58%低下します。60㎏の方で3.3㎏。決して不可能な数字ではありません。
⑤喫煙 5年間の禁煙で心筋梗塞・脳梗塞になる確率が下がります。また、受動喫煙の悲劇もあり、当院の患者さんにも数名、ご主人がヘビースモーカーで、奥さんが肺がんになっています。その時に「私は何も悪いことをしていないのに何で?」と皆さんが仰っていました。
最後に、メタボリックドミノという言葉を知っていますか?
ドミノ倒しのように内臓肥満というドミノが倒れることから始まり、高血圧・高血糖・高脂血症→動脈硬化→糖尿病発症・慢性腎臓病→糖尿病性腎症・網膜症・神経症とドミノが倒れ、総崩れて、心筋梗塞・心不全・脳卒中・下肢切断・失明へと進んでいく危険性があります。最初はたかが内臓肥満なのですが、その後は取り返しのつかないたくさんの病態につながっていくのです。さあ今日から始めましょう。脱メタボ宣言!まずは実践あるのみ。
いよいよピロリ菌の撲滅へ
今年の4月から函館市内の中学生を対象にしたピロリ菌検診が始まっています。全国的にはすでに多くの自治体で実施されていましたが、いよいよ函館でも開始となりました。ピロリ菌は胃の中に住んでいる細菌で、粘膜に炎症や萎縮などの変化を引き起こして最終的には胃がんの原因となることが分かってきました。
そのため日本では2013年から胃カメラで慢性胃炎などの異常が確認された場合に健康保険でピロリ菌の検査や除菌が可能となっています。ピロリ菌は衛生環境との関連が深く、上下水道などの衛生設備が未整備な時代に生活歴のある高齢者では感染率が高くなっています。例えば1970年代における60歳のピロリ菌感染率は80%以上でした。衛生環境の改善と共に陽性率は低下してきており、現在の10歳代の感染率は5%前後とされています。もしピロリ菌に感染している場合は胃粘膜が発がんの準備状態に入る前、つまり若年のうちに除菌するのが望ましいということで学校でのピロリ菌検診が実現することになりました。具体的にはまず学校で行う一次検査(尿の抗体検査)で感染の可能性のある人を見つけ、医療機関で二次検査(尿素呼気試験などの精密検査)を受け、陽性が確実であれば除菌治療を検討するという内容です。除菌治療については成人に比較して若年者では薬が効きづらいとされており、1回目の除菌成功率が50%程度にとどまるという問題点が残っています。しかし2回目の除菌治療を行えば最終的にはほとんどの方が除菌に成功するので、将来的には胃がん発生率の大きな低下が期待されます。
日本の胃がん対策はこれまではバリウム検診のようにできてしまったがんの早期発見・早期治療が重視されてきましたが、これからは最初から胃がんを発症させない予防策に大きく舵(かじ)をきっていくことになります。さらに除菌治療が今後進歩していけば、ピロリ菌の撲滅も視野に入って来ることでしょう。
C型肝炎をやっつけろ!
以前のC型肝炎の治療は、インターフェロンと内服薬の併用療法で、24~48週間インターフェロンの副作用[発熱・全身倦怠(けんたい)感・食欲不振・貧血など]を耐えて治療していました。しかしながら、現在とても良い薬が開発され、内服薬を服用するだけで12~24週でC型肝炎が治る時代になってきています。非常に副作用も少なく、その程度の軽いものばかりです。C型肝炎は遺伝子型で、1型・2型に分けられます。
日本人のC型肝炎の70%は、1b型というインターフェロンの効きにくいウイルスでした。2014年7月にインターフェロンを使用しない内服治療薬①アスナプレビル・ダクラタスビルの併用療法が認可され、さらに2015年6月には、第2世代の②ソホスブビル・レジパスビルの併用療法、さらに2015年9月には③パリタプレビル・オムビタスビル・リトナビルの併用療法が認可されました。一方、遺伝子型2型に対しては、2015年3月に④ソホスブビル/リバビリン併用療法が認可されました。
各々の国内臨床試験におけるSVR率(ウイルスの消失率)と薬剤の特徴を示します。
①の薬剤は、投与期間は24週・治療終了時92%、24週後84・7%、ウイルスの変異に弱い
②の薬剤は、投与期間は12週・治療終了時100%のウイルス消失率。
高度腎機能障害者には使用できない。副作用も軽微で、最も高頻度の副作用は鼻咽頭炎の29%であり、他には頭痛が7%、全身倦怠が5%、皮膚掻痒(そうよう)が4%程度です。その為、現在の主流のお薬です。
③の薬剤は、12週の投与期間、治療終了時91~98%の消失率。ウイルスの変異に弱い
④の薬は2型ウイルスに対する唯一の内服治療薬です。投与期間は12週間。治療終了時のウイルス消失率95~98%。高度腎機能障害者には使用できない、といった特徴です。治療の対象も、以前はインターフェロンが効かなかった人など条件がありましたが、現在では非代償性肝硬変(進行した肝硬変の状態)を除くすべてのC型肝炎症例がこれらの抗ウイルス療法の治療対象となりました。
いままだ治療に二の足を踏んでいる方は、一度肝臓専門医を受診してはいかがでしょうか?
[出典]日本肝臓病学会C型肝炎治療ガイドライン(第5版)2016年5月より抜粋
貧血をあなどらないで
貧血という病名を聞いたとき、みなさんはどのような症状を思い浮かべるでしょうか?
貧血は血色素(ヘモグロビン)の値が何らかの原因で減ってしまい、赤血球をうまく作れなくなった状態です。
一般的には10〜40代の女性に多い鉄欠乏性貧血がよく知られています。
立ちくらみやめまいの症状を貧血と思っている方が多いと思いますが、これは起立性低血圧などの血圧の調整障害の症状であり、貧血の症状ではありません。
受診される鉄欠乏性貧血の患者さんの多くは、健康診断で貧血を指摘されたり、指摘されていたのに自覚症状がなかったので放置していた方がたくさんいます。
慢性的に進行する鉄欠乏性貧血は、身体が順応してしまい、自覚しにくいのかもしれません。
また、自覚症状であってもそれを貧血の症状と思っていないこともありえます。
鉄剤投与で貧血が改善すると、「身体がらくになった」「ぐっすり寝られるようになった」「集中力が戻ってきた」という方が実は多いのです。自覚症状がないからといって身体に負担がかかっていないというわけではありません。
赤血球は身体全体に酸素を運ぶ役割を果たしているので、貧血の時には体中が酸欠となってしまい、じわじわと身体を苦しめているのです。
身体からSOSサインは出ているはずなのですが、「軽い貧血だから」とか、「貧血くらいで受診してられない」と無視している方が少なくありません。
貧血を決して、あなどってはいけません。
内視鏡による胃がん検診
日本では年間4万8千人が胃がんで死亡しており、悪性腫瘍による死亡率の臓器別で第2位を占めています。
全てのがんに共通ですが、医療がこれほど進歩した現在においても、がんで命を落とさないためには早期発見・早期治療が最も重要です。
日本では昭和57年度から胃バリウム検診が広く行われてきましたが、ここにきて変革のきざしが見えてきました。
昨年9月に厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」が「従来の胃バリウム検査に加え、胃内視鏡検査(胃カメラ)による胃がん検診を新たに推奨する」との報告書を出しました。
バリウム検査に比べて内視鏡検査の方がより早期のがんを発見しやすいことは臨床現場の消化器科医なら昔から肌で感じていたことですが、内視鏡検査による胃がんの死亡率減少効果を証明した最近の研究結果を根拠の一つとして今回の提言となりました。
今後これを基に検診のガイドラインが改正され、それに従って各市区町村が検診方法を見直していくことになります。
もともとバリウム検査には放射線被ばくの問題もあるため、今後は内視鏡検診への移行を目指す自治体が増えるものと予想されます。
ただし内視鏡検査は費用の問題、検査を実施する医師の確保、検査に伴う合併症に対応できる体制作り、など検診を適切に実施するための課題を解決する必要があるため、早い自治体でも来年度からの実施となりそうです。
当面は胃バリウム検査もこれまで通り行われるため、胃内視鏡検査と両方の実施体制が整う自治体では、受診者がどちらかを選べるようになるかもしれません。
がん検診をお勧めすると「症状がないから」とか「自分は大丈夫」と言って検診に消極的な方を時々お見かけしますが、がんは症状が出るころにはある程度進行していることが多いのです。
今後検診方法が変わっても、日頃からの生活習慣の管理と適切ながん検診の受診が大切であることに変わりはありません。
ノロウイルス感染症
例年この時期になりますと、インフルエンザやノロウイルスの発生がちまたで多くなります。
保育園や老人保健施設などで、ノロウイルスの感染に伴う罹患者の集団発生も報道されます。
症状は嘔吐(おうと)や下痢などであり、数日で治まるものですが、小児や高齢者では脱水や誤嚥(ごえん)による肺炎などを引き起こすこともあり、注意が必要です。
この時期に頻繁な嘔吐や下痢があるときは、まず、ノロウイルス感染を疑うことが肝要です。
吐物や排せつ物にはむやみに触れず、手袋やマスク、可能ならガウンを使用し感染の拡大を防ぐことが必要です。
ウイルスも変異してきており、感染力も変化してきております。
これがまた爆発的な流行の一因にもなります。
治療は、脱水を防ぐために点滴や補水液の飲用などを行い、整腸剤などでの対処になります。
下痢止めは病原性大腸菌感染などと同様に投与しないことが多いです。
トイレの便座、吐物や排泄物の消毒(次亜塩素酸ナトリウムの希釈液など使用)も大切です。
家庭血圧の値のバラツキ=血圧変動
「先生、家庭血圧の値のバラツキが大きくなったのは、私の機械が壊れているのでしょうか?」と、高血圧で通院しているAさんは首をかしげて聞いてきました。
どうやら、毎朝きっちりと同じ時刻、同じ姿勢で家庭血圧を測定しているのに、季節が秋に入った頃から、測るたびに血圧の値が大きく違うようになり、自分の家庭血圧計が信用できないとの相談でした。
血圧の値は測定する度にバラツキがあるものです。
これを血圧変動といって、病院で測る診察室血圧も家庭で測る家庭血圧にも必ず変動があります。
以前は、測定器の機械的誤差や測定方法が丁寧でないことなどが、血圧変動の主な原因と考えられていました。
しかし2010年頃から、血圧変動が大きいことが脳卒中の発症と関係があるとの研究結果が報告されるようになり、血圧変動は老化や動脈硬化の進行とも深く関係があると考えられるようになりました。
血圧変動には、夏に低く冬に高くなる「季節変動」、病院の定期受診時に測定する度に違った値となる「受診間変動」などがあります。
さらに近年は家庭血圧測定が普及したことによって、毎日測定すると毎日違う値となる「日間変動」、朝と夜などの1日の中で違う値となる「日内変動」、さらに1機会に複数回測定した場合に違う値となる「測定間変動」などが容易に調べられるようになりました。
最近はそれらの変動に関して幾つもの研究がされるようになり、血圧を下げる薬の中でも特にカルシウム拮抗薬が、「受診間変動」を小さくすることで、脳卒中を予防する可能性がある事が分かってきました。
Aさんのように気温が寒くなり始める秋頃から血圧変動が大きくなる人は、動脈硬化が進行していると思われますので、冬期間は気温の低い場所に突然出ることを避けるなど気温の変化に注意することで、血圧変動を大きくさせない生活をおくることがとても大事です。
血液内科にご相談を
血液に関する病気と言えば、白血病など重篤な病気を思い浮かべるかもしれませんが、貧血、あざや内出血、鼻血など身近な症状も血液内科の専門分野です。
血液の中にはさまざまな成分が含まれており、そのひとつに赤血球があり、その中のヘモグロビンが体内に酸素を運ぶ重要な働きをしています。
ヘモグロビンの合成には鉄が必要です。鉄の欠乏は、供給量と需要量のバランスが負に傾くことによって生じます。
鉄が不足するとヘモグロビンが産生できず鉄欠乏性貧血になります。
貧血の90%以上がこの鉄欠乏性貧血です。
鉄は体内で生成することはできないので、食事で効率よく摂取しなければなりませんが、非常に吸収率が悪く、過剰摂取は良くないと体が分かっているので少しずつしか吸収できないようになっています。
鉄分のサプリメントもありますが、食材から摂取する方が吸収効率はよいです。
ほうれん草や小松菜、レバーなどの鉄分を多く含む食材を取り入れながら、バランスの良い食事を毎日心がけていれば、自然と必要な鉄分が摂取でき、貧血予防・改善が図れます。
よく、めまいや立ちくらみが貧血の代表的な症状のように言われますが、実は貧血の主な症状は「息切れ」です。
酸素不足になると、もっと呼吸をして酸素を取り込もうとして息切れしやすくなるのです。
日常的に息切れを自覚されている方は貧血を疑った方がいいかもしれません。
息切れ以外の症状としては、爪が割れる、口内炎ができやすい、肩こり、冷え性、頭痛、むくみなどが貧血のサインと言えます。
普通に生活をしていて、「血液がおかしい」と思われる方は少ないと思いますが、息切れなど気になる症状がある場合は、血液が危険信号を発信しているサインなのかもしれません。
一度、血液内科で相談または、診てもらった方が安心です。