一家に一台血圧計~自宅で血圧を測りましょう
春の健康診断も終わり、血圧に注意とされているあなた!2019年4月に高血圧治療のガイドラインの改訂がありました。より血圧を下げ、健康で長生きをしましょうという趣旨です。そもそも血圧の正常値って?
病院の診察室では、上の血圧(収縮期血圧)が120未満かつ下の血圧(拡張期血圧)が80未満です。自宅では、115/75未満です。結構厳しい数字ですよね。特に病院や検診施設での血圧測定は、緊張しますので高くなる方も多いです。でも本当にそうでしょうか?
病院で高く自宅で正常な方を白衣高血圧と呼びますが、この方々も血圧測定を続けていくと徐々に本当の高血圧症になりやすいと分かってきました。己を知ることが大事です。血圧は、測ってみなければ高いか低いか分かりません。自覚症状が出ている時はかなり高くなっている時で、それこそ倒れる寸前かもしれません。
自宅の血圧測定の意味は? なんと家庭での血圧測定値の方が、病院での血圧より、その後の脳梗塞や心筋梗塞等の合併症への関連が高いのです。ただし、血圧は変動しますので条件を決めて測定することが必要です。特に血圧計を買ったばかりの1週間は、器械の測定に慣れていませんので高くなる方が多いです。また、測定値も2回連続して測定した時には、1度目が高く2度目に少し下がります。
基本は
①家庭での測定は、1日2回。朝は起床後1時間以内、排尿後、朝ごはんの前。そして寝る前です。但し、飲酒後と入浴後は、血管が拡張するので血圧は下がります。そのため、寝る前といっても、入浴前かつ、夕食に晩酌をされる方は夕食前の測定になります。
②測定は、2回測定し、その平均値をその機会の血圧とします。
③高血圧かどうかの判定は、朝の血圧と夜の血圧を7日間測定しその平均値を見て決めます。家庭では 「血圧が130超えたら…」黄色信号ですよ!
母の日・父の日・敬老の日、血圧計のプレゼントはいかがですか?
咳(せき)について
「気管支炎ですね」「咳喘息(ぜんそく)ですね」「鼻炎が原因ですね」「気管支喘息の気がありますね」
「咳がなかなか止まらない」と話すとこのようにさまざまな返答が先生方から返ってくるものです。
しかし、薬を飲んでも一向に症状が良くならず、咳に悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
「精神的なものだ」「もう高齢だから仕方ない」そう言われて半ば諦めつつ、暮らしている方もいらっしゃいます。
なぜそうなってしまうのか…。
理由の一つとして、咳の原因を特定しにくいということがあげられます。
下気道(気管・気管支)や肺だけでなく、上気道(鼻腔など)や食道などさまざまな臓器や器官が咳に関係します。
また、外来では気管や気管支、さらには肺の奥を直接目で見て観察することもできないため、どれくらいの炎症が起きている(荒れている)のかを視覚的に把握することが困難です。
日常的に吸っている空気が澄んでいるのかよどんでいるのか、花粉やほこりが多いのか多くないのかなど患者さんを取り巻く環境を目で見て確認することが難しいことも要因です。
「症状の程度」も「治るまでの期間」も患者さんそれぞれで千差万別です。
百日咳なんていう何とも咳が止まらなそうな名前の感染症もあったりします。
長年患っていた咳の原因が、胃酸の逆流(逆流性食道炎)だったということもよく聞く話しです。
後鼻漏と言って、鼻水が鼻の後ろから喉に流れ落ちることが原因の咳もあります。
治療をしていく過程でじっくりお話しを聞くと、ご自宅をリフォーム(壁紙の貼り替えなど)してから咳が出始めたことが分かり、調べるとハウスダストアレルギーをもっていたということもあります。
これからの季節は、花粉やPM2・5、黄砂なども咳の原因となります。
副流煙を含めた喫煙ももちろんのことです。
こうした物質が含まれた空気を吸い込むことで気管や気管支の粘膜が刺激を受け、むくみ、空気の通り道が狭くなることで、咳や痰(たん)が出てしまいます。
いくら治療をしたとしても、刺激を受け続けることで症状が完全に治まらないこともあります。
繰り返しになりますが、咳の原因はさまざまです。
何のきっかけもなく咳が出始めたり、咳が長引くようなときには、周囲の環境を見返してみるのも一つです。
CTスキャンを導入してよかったこと
「胸部レントゲン写真で肺に何かがありそうだけど、ここじゃ分からないから大きな病院を紹介します。
紹介状を用意しますから後日、受診してください。
大きな病院も予約制なので、早くても1~2週間は待つことになりますね」
「咳が止まらない」「呼吸が苦しい」そういう症状で何気なく受診したクリニックでこう言われたら…。
患者さんは当日まで不安でたまらない夜を過ごすことでしょう。
私も、今まで五稜郭病院という総合病院に勤務していたときには、「この1週間不安で不安で夜も眠れなかったのよ」という類いの声をたくさん耳にしてきました。
では、総合病院受診後にどんな検査を行うのか。
それが多くの場合、「胸部CT」となります。
なぜなら、「胸部レントゲン写真」では、「何かがある」ということしか分からないからです。
それが、昔の肺の病気(結核など)の痕跡なのか、今の肺炎なのか、はたまた悪性疾患(肺がん)なのかは明確に区別することが困難なため、より詳しく、肺の中を調べることが必要になるからです。
「それではCTの検査をしますね。
ですが、CTは予約制のため、今日中に検査するとなると何時間も待っていただくことになります。
ご都合が悪いようであれば、CT検査の予約をしていってください」。
これもまた総合病院でよくある会話です。
予約をしてもここからまた1週間、2週間先延ばしにされてしまいます。
もしくは当日何時間も待つか…そういった精神的・肉体的・時間的負担を軽減するために、当クリニックにCTスキャンを導入することに決めました。
当クリニックでは、胸部レントゲン写真を撮ってからCTが必要と判断し、実際にCT検査を行って、大きな総合病院に紹介する必要があるかどうかを決定するまでに、現在は1時間程度で行うことができております。
もし総合病院に紹介となっても早い時間であれば当日、遅くても翌日には総合病院へ赴き、今後の相談をしてもらうことができます。
これが、私がCTスキャンを導入して本当によかったと思えることです。
また、CT検査を行うことで肺に空気を送る気管支の状態も一緒に目で見て確認することができるため、より細やかな治療を行うことができております。
「咳が止まらない」「呼吸が苦しい」などの症状にお困りの方は、気軽にご相談ください。
なかなか良くならない下痢や便秘の改善方法
下痢や便秘の原因として比較的多い「過敏性腸症候群(IBS)」は、日本人の10人に1人が悩まされている病気です。
明らかな原因は、まだ解明されていませんが、主にストレスで、他にも甲状腺や糖尿病などの内分泌疾患、寄生虫などが原因となる場合もあり、複数の要因が組み合わさることで発症すると考えられています。
IBSは①下痢型②便秘型③下痢便秘混合型の3タイプに分かれています。
下痢型の場合、脳で感じたストレスにより、腸の蠕動(ぜんどう)運動を盛んにする信号が伝わりすぎて下痢を起こします。
いつ下痢が起こるか不安になりそれがストレスとなり悪循環になるのです。
香辛料やアルコール、コーヒーなどの刺激物や脂肪分の多い食事を控え、ストレスの軽減を図ることはもちろんですが、おなかにやさしい食事の後でも下痢を起こす人の中には胆汁が悪さをすることもあるため、その場合は、お薬での治療になります。
便秘型は、女性に多いのが特徴です。
女性は食事量が少なく腹筋が弱いためで、出産や過度なダイエットも原因となります。
水分を多く取り、ぬるめのお風呂で、おなかをマッサージしたり、ラジオ体操などの体をひねる運動も効果的です。
また、起床時や就寝前に布団の上で、うつ伏せになったり左右にゴロゴロ回転する運動、このときに枕やクッションをおなかの下に入れて圧迫するとより効果的です。
さらに、1日8時間以上、腸をお休みさせてあげて下さい。
寝ている間に腸が活発に動き便を肛門近くまで運んでくれます。
起床後朝食を摂取することで腸が刺激され排便を促します。
食事も重要です。
実は、野菜の取りすぎにも注意が必要です。
野菜の食物繊維の中には不溶性と水溶性があり、既に便秘になっている状態で不溶性の食物繊維を含むゴボウやイモ、キノコなどを取り過ぎると消化が悪くますます悪化する場合があります。
便秘の状態では水溶性の食物繊維を含む海藻や果物、また、消化の良い炭水化物(ご飯、パン、麺類)が良いでしょう。
不溶性の食物繊維は、便秘の予防には効果的です。
IBSと似た症状が現れる病気は、細菌性・ウイルス性腸炎や潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がん等もあり、レントゲン検査や大腸カメラを行い、他の病気がないかどうか検査をすることが大切です。
糖尿病あれこれ その2
冬になると運動の機会が減ります。
雪国ならではの悩みですね。
対策としては
①比較的大きなスーパーやショッピングモールへ買い物に行きましょう。
陳列棚を眺めながらゆっくりと歩けば、気が付いたら20分程度は歩けます。
気を付けるのは、さすがにショッピングセンターですから、買いすぎないこと。
また、冬はインフルエンザがはやりますので、マスク着用と帰宅時のうがい手洗いは必須です。
歩くことに関して、職場まで片道10分未満しか歩いていない人に比べると、20分以上歩いている人は糖尿病になりにくいことがデータで示されています。(マイナス27%)(※1)
②雪かき
これもいい運動にはなるのですが、ヒートショックにご用心。
通常起床直後に窓の外をみて、雪かきを始める方が多いと思います。
起床後、暖かい室内から急に寒い外に出ると血圧が急上昇。
運動により心拍数も増え、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたり、汗をかくくらい雪かきをしますと、運動により血圧が低下し、めまいをおこして倒れることもあります。
糖尿病の方は、お薬を飲んでいる場合、空腹で雪かきをしますと、低血糖になり、倒れやすくなります。
ちゃんと暖かい服装に着替え、温かい飲み物で水分を補給してからにしましょう。
理想的には、朝食後に行うのが食後の血糖も下がり効果的です。
話ががらっと変わりますが、最近話題なのは、糖尿病患者には、がんが多いということ。
糖尿病でない人を1としたときの、糖尿病の人のがんによる死亡の危険性(※2)は、がん全体1.26倍、肝がん2.05倍、大腸がん1.41倍、甲状腺がん1.99倍、腎がん1.84倍、前立腺がん1.41倍、卵巣がん1.60倍、子宮体がん2.73倍、乳がん1.72倍、膵臓がん1.53倍、胆嚢がん1.33倍、胆管がん1.41倍、悪性リンパ腫1.39倍ということが分かってきました。
特に肝がんは原因が脂肪肝によるものが増えてきており、注意が必要です。
春の健康診断では積極的に胃カメラや腹部エコー、便潜血反応や大腸内視鏡検査等、ないがしろにせず積極的に受けてみましょう。
(※1)Sato KK, etal.Diabetes Care.2007 30 2296‐2298
(※2)Chen Y, et al.Diabetologia.2017 60 1022‐1032
胃アニサキス症に注意しましょう
魚の生食にまぎれて人間の口から入り込み、主に胃で悪さをするアニサキスという名前の寄生虫がいます。
胃アニサキス症の症状は食品を摂取して数時間後の激烈な胃痛が典型的ですが、吐き気やじんましんを伴うこともあります。
これらの症状はアニサキス症に特異的なものではありませんが、食事内容の問診と典型的な症状から疑う病気の一つになります。
そして緊急で胃カメラを行うと、白くて細長い2cmほどの虫体が頭を胃の壁に突っ込んでにょろにょろもがいているのを観察できます。
確認されたら引き続き内視鏡を通じて鉗子(かんし)と呼ばれる器具を挿入し、つまんで除去します。
その後速やかに痛みは引けていき治療は完了です。
アニサキスはもともとクジラやイルカが宿主(寄生する先の生き物)であり、人間は宿主ではありません。
クジラやイルカに食べられる前のイカやサバなどの魚の体内で幼虫の状態になっており、人間に悪さをするのは実はこの幼虫なのです。
ですから人間の口からうまい具合に入り込んだものの、人間の胃はアニサキスにとって好適な環境ではなく、成虫にもなれずに迷走の末、胃の壁から出ようとしているのかもしれません。
もがいているうちに数日で自然に死んでしまい、吸収されたり便とともに排せつされたりして排除されます。
アニサキスは食品の70℃以上の加熱か、マイナス20℃以下で24時間の冷凍で死滅します。
なので確実な予防策としては加熱か冷凍を、ということになりますが、新鮮な刺身のおいしさは日本人にとって何物にも代え難いものであり悩ましいところです。
他の予防策として、食物に付着した虫体が肉眼で見える場合は除去したり、アニサキスは虫体が損傷すると動かなくなるため、よくかんで食べることで発症を防げる場合もあるだろうと想定されています。
新鮮な魚はアニサキスの寄生に注意しながら食べましょう。
もう辛くない、恥ずかしくない! 大腸カメラ
死亡者数がこの30年で5倍に増加し、今や最も多いがんになりつつある大腸がん。特にこの函館では、大腸がんで死亡する人が全国平均より30%以上も多いことが分かっています。だからこそ、定期的に検診や検査へ行くことは、とても大切で早期発見・早期治療が、がんから命を救う有効な手立てになります。
大腸がんで亡くならないためには、まずは、便潜血の検査を毎年受けることです。便潜血検査は、便の中に血が混じっていないかを調べる検査で、便の中に血液が混じっていると「陽性」となり、大腸カメラを受けることになります。ただし、大腸がんができているのに、便潜血が陽性にならない人が15~20%いると言われています。陰性だからといって安心はできませんので、毎年欠かさずすることが大切です。
大腸カメラは、下剤を飲んで腸をきれいにしてから始めます。以前の下剤は、量も多く、とても飲みにくいものでしたが、最近では、量も減り、味も随分改良されています。肛門からカメラを入れて検査が始まりますが、きちんとお尻が覆われた検査着を着用していただきますので、恥ずかしいことはありません。検査で使用されるカメラも細く柔らかく改良されていますので、痛みもかなり緩和されています。それでも不安が強い方、痛みが伴う方は鎮静剤を使用することもできます。
大腸カメラのメリットは、その場でポリープやがんが見えますし、そのような病変があれば、細胞をとって、良性か悪性か、つまりがんかどうかを判断することができます。がんはもちろんですが、腺腫という腫瘍性のポリープがある場合は、全て切除することが大切です。たとえ良性であってもポリープを小まめに切除することにより、大腸がんによる死亡率が低下すると言われています。
いつかは大腸検査を受けなければと分かってはいても、そう思いながら何年もたっていませんか?
そろそろ重い腰を上げてお近くの専門医にご相談下さい。
糖尿病の兆しがありませんか? ~糖負荷試験のすすめ
春の健康診断の時期ですね!
お花見・ジンギスカン・ゴールデンウイークの旅行など忙しかったあなた!
健康診断は、いかがでしたか?
特に糖尿病の血糖値やHbA1cにチェックのついている方はいませんか?
糖尿病の兆しがあると曖昧にせず、この際、はっきり白黒つけた方が、今後の心構えや対処に役立ちます。
糖尿病・予備軍の方と、正常な方では、高血圧やコレステロールの治療の基準値が異なってきます。
また、糖尿病の場合使いにくいお薬もあります。
そんな方におすすめなのは、ブドウ糖負荷試験です。
この検査で糖尿病なのか境界型糖尿病(予備軍)なのか、正常なのかを確認してみましょう。
検査は、内科であればどこでもできる簡単な検査です。
早朝空腹で採血・尿検査を行い、その後75gのブドウ糖の入った甘い水を飲みます。
飲んでから、30分、1時間、2時間後にそれぞれ採血を行います。
正常な方は、飲んで30分すると血糖値が上がってくるのですが、30分~1時間をピークに、2時間たつと血糖値は、140mg/㎗以下に低下してきます。
糖尿病初期の方は、空腹の時の血糖値は、正常なことが多いのですが、血糖値を下げるインスリンというホルモンが不足したり、その働きが悪くなっているため血糖値は下がりにくくなります。
そのため、30分・1時間と、血糖値が上がり続け、2時間後には200mg/㎗を超えてしまいます。
予備軍の方はその中間で、一度上がった血糖値が、上がり続けないものの、下がりきれない状態になります。
このように、糖分を負荷した血糖値の反応をみて①糖尿病②予備軍③正常だけど糖尿病になりそうな状態④正常者―を判定します。
特に家族に糖尿病がいる方、血圧やコレステロールの高い方で、血糖値やHbA1cが基準値を超えたときは、確認してみてはいかがですか?
膵臓がんと糖尿病の関係
先日、元プロ野球監督の星野仙一さんが膵臓(すいぞう)がんで亡くなったと報道がありました。
膵臓がんは日本人のがんの死亡原因として臓器別で男性は第5位、女性は第3位となっており、年々増加傾向にあります。
また解剖学的にがんが周囲に広がりやすい特徴があり、早期発見や治療が難しい手ごわい腫瘍です。
ところで、膵臓がんと糖尿病の関係についてご存じでしょうか。
まず、糖尿病にかかっていると、いろいろな臓器にがんの発生が多くなります。
国内外で発表された研究によると、糖尿病の方はがんになるリスクが20%ほど高いことが報告されており、日本人では特に大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが高いとされています。
そのうち膵臓がんについては健常者に比べて1・8倍なりやすいと報告されています。
その原因ははっきりとは分かっていませんが、糖尿病の多くを占める2型糖尿病の方はインスリンが効きにくくなっている状態のために逆に血液中のインスリン濃度が高くなっており、血液中の過剰なインスリンががん発生に関与する可能性があ
ると考えられています。
その反対に、膵臓がんから糖尿病を新しく発症した、あるいはそれ以前からあった糖尿病が悪化したと考えられる場合もあります。
膵臓がんと診断された時点で、その前2年以内に糖尿病を新しく発症した方が約半数と高率に認められます。
また、高齢で糖尿病を新しく発症した患者さんは、その後3年以内に1%の方が膵臓がんになったという報告があります。
これらは、膵臓がんが糖尿病の発症や経過に影響を与えたと考えられます。
そのため、高齢者で新たに糖尿病を発症した場合や、糖尿病の治療中に急激な血糖コントロールの悪化が見られた場合には、積極的に膵臓の検査を受ける必要があります。
このように、膵臓がんと糖尿病は深い関係にあるので注意が必要です。
病は気から?天気から?
「先生、お天気が悪いと、頭痛や目まいや肩凝りを感じるのは私の思い込みのせいでしょうか…」と、高血圧で通院しているAさんが聞いてきました。
どうやら長年の経験で、天気が崩れ始めると体調も悪くなるとのことでした。
天気の変化で体調を崩す病態は気象病と呼ばれ古くから研究されています。
気象病は自律神経系の調節が乱れることで発症します。
人間は大気圧という圧力で常に体全体を押しつけられていますが、天候が崩れ気圧の低下が始まると、押す圧力が緩み自律神経のバランスは交感神経から副交感神経優位へと変化します。
気圧の低下が大きいと、血管やリンパへの圧力が弱まり血行が悪くなり、またヒスタミンなどの過剰分泌も起こります。
これら一連の変化は、頭痛、目まい、肩凝り、古傷の痛み、眠気、倦怠(けんたい)感、鼻炎、ぜんそく、アトピーなどの悪化を引き起こします。
また、脳卒中などの重篤な疾患も気象と関連しています。
2016年のイスラエルの研究報告では、2日前の低気圧が深部脳出血の発症と関連していました。
また2012年9月の函館市の脳卒中患者を調べた研究(平成29年道南医学会報告)では、脳卒中の発症は
①発症3日前の午後から前日の朝までの高い気温
②前々日と前日の高い家庭心拍数
③前日と当日の低い気圧
④前日から翌日にかけての気温急降下と家庭血圧急上昇
―などと関連していました。
つまり、先に高い気温による脱水状態、次に気圧低下による副交感神経優位状態、そこで気温が急降下し交感神経優位状態へ急転換と血圧急上昇、この一連の気象と体の変化が脳卒中を発症させやすくしたと考えられます。
Aさんが感じていたように、天気の変化は気持ちの浮き沈みだけでなく自律神経系を変動させさまざまな病態を引き起こし、時に脳卒中のような重篤な疾患の発症にも関わることがあるのです。
近年は異常気象が多発し気温や気圧の変動が激しいので、気象の変化に細やかに気を配り対処して生活することが大事になります。