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甘くないけど甘いもの 糖質とり過ぎていませんか?

内科2022/05/31

 GWも終わり、体重は増えていませんか?血糖値が気になる方はいませんか?甘くないけど甘いもの~たくさん食べてはいませんか?

 まずは、主食のごはん茶碗1杯150gなら糖質は55g、角砂糖(4g)換算で13個分です。ラーメンの麺1人前200gとして糖質は55gとなり同じく角砂糖13個分です。そば・うどんでは1人前、角砂糖11個分位になります。じゃあ、ラーメン+ライスは?糖質を合わせると、角砂糖26個分になっています。紅茶に、角砂糖26個入れて飲んだりできませんよね?でもラーメン+ライスなら簡単に食べれますよね?(僕だけでしょうか?)おにぎり1個であれば、角砂糖10個分です。餃子であれば6個で皮だけで角砂糖5個分です。

 このように、ラーメン+ライス・そばやうどんに、おにぎりをつけるなど、主食が重なるセットメニューは、糖尿病・血糖値の気になる方には、お勧めできないメニューです。このように、甘くなくても血糖値を上げる食事に気を付けましょう。糖質を少なくすると、食事量が減り、満足感がなくなるようであれば、お肉・お魚・大豆製品・葉物野菜を多めに食べてください。ラーメンであれば、ライスを頼まず野菜マシマシにしてもらう。そばなら、焼き鳥(塩)・お刺身・冷ややっこなどがおすすめです。食事の開始は、ベジタブルファースト。野菜サラダやおひたしなどをゆっくり5分以上かけて食べるように心がけましょう。5分以上時間をかけて食べるのはなかなか難しいですが、早食いは高血糖のもとになります。野菜をゆっくりよく噛んで食べると、食物繊維がその後の血糖値の上昇をおだやかにしてくれます。食後のデザートが食べたい方?今日は、身体を動かしましたか?動かしてなければ、デザートの量は少し考えましょう。

 基本的に、糖尿病で食べてはいけないものはありません。無理は禁物、まずは、自分の食事~とくに糖質量について気を配る、その気づきが大切です。


Text by はら内科クリニック 院長 原 信彦( 2022年5月23日 「北海道新聞夕刊」掲載)

コロナ禍におけるがん検診とこれから

内科2022/03/03

新型コロナウイルス感染症は今だに終息のきざしが見えません。その影響をうける医療上の問題は救急患者の受け入れ制限や待機的手術の延期などにも波及しますが、もう一つ懸念されているのはコロナ感染症への不安からがん検診を控えることによる発見の遅れです。

 がんは初期段階では症状がないことが多いことが特徴です。がん検診を定期的に受診し、早期発見・早期治療することにより、多くの方は助かることが分かっています。しかし、コロナを理由に受診を見送り次の受診までの期間が空いてしまうと、早い段階で発見できたはずのがんが進行した状態で見つかる可能性が高くなります。がんはコロナの収束を待ってはくれませんので、コロナ禍であってもがん検診は定期的に受診することが推奨されます。

 現在国として推奨し各自治体で実施されているがん検診は胃・大腸・肺・子宮・乳腺の5つになりますが、それぞれの対象臓器によって検診方法は異なります。胃がんのように最初から内視鏡やバリウムのような苦しい検査を必要とするがんもあり、他のがんでも検診で陽性に出た場合はさらに追加で様々な検査を受ける必要があります。そのような中、2014年から国立がん研究センターを中心に研究が始められているマイクロRNA測定に期待が寄せられています。この方法では1滴の血液から13種類のがんを早期の段階から発見可能で、さらにその発見精度も95%以上というまさに夢のような検査手法です。現段階では数年以内の実用化を目指して有効性を検証する作業が急ピッチで進められています。この手法が医療現場に登場した場合はがん検診が一変する可能性を秘めており期待されるところですが、それが実現するまでの間は、命を守るためにコロナ禍であってもきちんとがん検診をうけておくことが大切です。


Text by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男( 2022年2月21日 「北海道新聞夕刊」掲載)

長引く咳やのどの違和感、繰り返す胸痛、それは胃酸が原因かも

内科2021/12/22

 食べ物を消化するために胃から分必される胃酸は、PH1.0~1.5で、食べ物を消化・殺菌するために強力な酸性を保っています。

 その強力な酸から胃の粘膜を保護するために、胃からは粘液が分泌され、わずか1mlに満たない量で胃を守っています。

 胸やけは、胃酸が食道に逆流することで食道に炎症を起こす逆流性食道炎が原因です。

 本来は、食事の時以外は、食道括約筋が胃の入り口を締め付けているので胃酸が食道に逆流することはありませんが、食事や生活習慣、また、食道括約筋が緩んでしまうことが原善薬などで改善しますが、非びらん性食道炎には、抗不安薬や抗うつ剤睡眠薬なども効果がある場合があります。

 また、内服で効果がみられない方、食道括約筋が既に緩んでいたり、食道裂肛ヘルニアを伴っている場合は、「腹腔鏡下噴門形成術」といって、胃と食道の間の食道括約筋を補強するために胃の上の部分を引っ張り上げ、胃に巻き付ける手術を行うことがあり、約1週間ほどの入院治療になります。

 重症な逆流性食道炎の方は、バレット食道から食道がん(腺がん)へ移行するケースが増加しており、手術は、食道がんのリスクを軽減するというメリットもあります。

 また、逆流性食道炎の主な症状は胸やけですが、すっぱい物がこみ上げてくる呑酸やのどの違和感、声がれ、しゃっくり、長引く咳、心筋梗塞や狭心症のような胸が締め付けられるような胸痛を訴える方もいます。

 これから年末年始で、食べ過ぎの機会も増える時期ですので、逆流性食道炎を疑われる症状のある方は、自分に合った治療法を消化器専門医に相談してみてはいかがでしょうか。


Text by 鈴木内科外科クリニック 大原 眞理子( 2021年12月20日 「北海道新聞夕刊」掲載)

どんな胸痛?

内科2021/12/22

 「狭心症の胸の痛みって、どんな胸痛?」と、時々、質問されます。「こんな症状なら、狭心症です」と答えられるような、キーワード一発で診断がつくことは、残念ながらありません。狭心症は「胸が痛くなる」というのが、そもそもの定義だったのですが、痛くないこともあるので、参考程度に胸痛の話をします。

 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こり、血液の通路が狭くなったり、血栓で詰まったりして、十分に心筋へ血液が行き渡らないことが、胸痛の原因になります。典型的には、胸の真ん中の奥の方に、「締め付けるような」、「熱い鉄の棒を押し込まれたような」不快感を自覚します。5~10分で改善するなら、血行が改善して心筋に傷がつかずに済んでいるのですが、20~30分続くようだと、心筋梗塞に進展します。命とりです。

 最初の症状を例えるならば、寒い朝に出かけるとき、家を出た玄関先で、「胸を圧迫される」、「わしづかみにされるような」胸痛を感じるのですが、少しゆっくり歩くようにすると、次第に良くなって治まる(労作性狭心症)。あるいは、朝方、布団の中で、もう起きようかという頃に、「胸をギュッとつかまれたように」胸痛を自覚する(冠攣縮性狭心症)。

 でも、「背中が痛い」と思う人もいますし、左肩の方に向かう放散痛だけを感じて、「左肩が痛い・だるい」、「左の歯が痛い」と言う人もいます。高齢になると、または、糖尿病を患っていると、胸痛の自覚がないことがしばしばあります。「胸がヒリヒリして何となく具合が悪い」、「歩くと息切れがする」「吐き気がする」「めまいする」「食欲がない」というようなさまざまな症状で見つかることもあります。

 症状だけで簡単にわかる病気ばかりではないので、病院では検査をするわけです。「なんか変だな」と思ったら、一人で判断せずに、医師に相談してみてください。


Text by 榊原循環器科内科クリニック 榊原 亨( 2021年12月20日 「北海道新聞夕刊」掲載)

腹八分とはよく言ったもの

内科2021/12/22

 最近健康診断で肝機能障害はありませんでしたか?

 自粛による巣ごもり、なんとなく運動も控えがち、いわゆるコロナ太りの患者さんが目立っています。アルコールを飲まなくても、肝機能障害は起こります。いわゆる脂肪肝です。

 この脂肪肝には、最近、曲者がいます。全く症状がなく、徐々に進行して、気が付いた時には肝臓の終末状態になってしまう、非アルコール性脂肪肝炎「NASH」です。脂肪肝に、①肥満②2型糖尿病③下記代謝異常のうち2項目以上を合併する場合(ウエスト周囲罫の増大~男性90センチ

女性80センチ以上・高血圧症・高中性脂肪血症・低HDLコレステロール血症・耐糖能障害いわゆる糖尿病予備軍・インスリン抵抗性・高感度CRP高値)をMAFD(metabolic dysfunction-associatedfattyliver disease)
代謝異常を合併する脂肪肝と呼ぶようになってきています。このMAFLDの方々が、NASHとなりやすいといわれています。あれ?でもこれって私かも?と思う方も多いと思います。いわゆる生活習慣病の重なっている状態です。治療も食事療法・運動療法によるダイエットが基本となります。運動療法は、消費カロリーの多いランニング等の有酸素運動が勧められていましたが、最近では、筋トレ等のレジスタンス運動も、同様に効果的であることがわかってきました。運動内容にかかわらず、脂肪肝の改善効果は、運動の実施時間に比例していることが報告されています。体重減少の効果は、7%の体重減少で肝臓の組織についた脂肪が取れてきます。10%の減量では、肝臓が固くなる線維化という現象が改善してきます。食事療法は、カロリー制限が重要であり、内容も炭水化物50%脂質20~25%に制限することが推奨されています。医食同源・腹八分とは、よく言ったものです。難しく考えず、脂っこいものを少なくして腹八分の食事を目指しましょう。残り物が出た場合、もったないといって食べずに、冷凍・冷蔵保存、もしくは、食べない努力を!フードロスの観点からは、食材を残さないで済む買い物をしましょう。


Text by はら内科クリニック 院長 原 信彦( 2021年11月22日 「北海道新聞夕刊」掲載)

手の血管

内科2021/12/22

 「手の血管がふくらんで見えるんです。」と相談されることがあります。まず自分で簡単に確認してみましょう。手を高く上げて下さい。ふくらんでいた血管が萎みましたか?次に手を下ろして下さい。またふくらみましたか?それは静脈という血管です。もし手を上げても下ろしてもふくらみが変わらない場合やドクドク拍動している場合は動脈かもしれません。確認するために病院で診てもらいましょう。循環器内科、心臓血管外科が専門科です。

 もし静脈だとわかった場合は必ずしも病院で相談する必要はありません。それは単なる血管の拡張であり、加齢や体質によるものです。若い時に比べて血管周囲の脂肪などの組織が減ってきて相対的に浮き出て見えやすくなります。また体質的に表面に沢山血管が走行している人もいます。さらにスポーツや仕事で腕の筋肉を過度に使用する場合、静脈が発達して太く見えやすくなります。

 一方、静脈瘤という病気があります。静脈の中にある静脈弁が壊れてしまったもので、特に下肢に出来る静脈瘤は妊娠や出産を経験した女性に多く見られます。しかし手には静脈瘤はほとんど発生しません。何故なら普段の生活で立ったり座ったりする状態で手はほぼ心臓と同じ高さにあるため、静脈弁に圧力が掛からず弁が破壊されることは稀だからです。

 手の静脈の拡張は治療を要する病的な意義はありません。手を見せることを職業とする場合など特殊なケース以外は治療しません。むしろ手の血管をつぶしてしまうと将来大きな病気になった時、採血や点滴をする時に大変困ります。将来への備えとして手の血管は大切にしましょう。


Text by こにし内科・心臓血管クリニック 小西 宏明( 2021年9月20日 「北海道新聞夕刊」掲載)

新型コロナワクチンと集団免疫

内科2021/12/22

 日本ではコロナ感染者が急増(8月中旬執筆時点)し、緊急事態宣言も延長となりました。2月に始まったワクチン接種はコロナ禍終息の切り札と期待され実際7月以降は高齢者の感染や死亡は減少しましたが、まだ決定的な効果とは言えないようです。その原因として、緊急事態宣言の長期化やオリンピックにより人流の抑制ができなくなっていること、ワクチン不足による若年者層への接種の遅れ、水ぼうそう並の感染力を持ちワクチン効果が低下するとされるデルタ株のまん延、など複数の要素があげられます。

 海外に目を向けると、ワクチン接種率が75%と高いイギリスでは接種による「免疫の壁」を試す実験としてすべての行動制限の解除が行われました。開始2週間後の時点ではデルタ株の感染者が急増したものの死亡率の低下が続いており、ワクチン効果の表れと考えられています。

 一方感染予防効果については、アメリカで発生したクラスターの分析ではデルタ株が9割を占めさらに感染者の7割がワクチン接種終了者でした。変異株に対するワクチンの感染防止効果については報告によりばらつきがありますが、ファイザー社は先日同社のワクチンの3回接種によりデルタ株に対する中和抗体価が大幅に増強される研究データを公表しました。イスラエルでも感染の再拡大が止まらずファイザーワクチンの3回目接種がすでに始まっています。ドイツも9月から開始の予定で、日本でも来年の追加接種に向けて検討が始まりました。有効な治療薬が開発されるまではワクチンに期待するしかありませんが、はたして狙い通り集団免疫が獲得できるか否かはまだ不透明な状況と言えます。

 コロナ前の生活に早く戻りたいと誰もが願っていますが、ワクチン接種率が上がっても当面はマスク・手洗いなどの個人防護策は続ける必要がありそうです。


Text by 弥生坂内科クリニック 渡辺 雅男( 2021年8月23日 「北海道新聞夕刊」掲載)

高齢者って、何歳?

内科2021/12/15

世界保健機構WHOの定義では、65歳以上を高齢者と呼びます。近年、日本の高齢における心身の健康調査からは、20年前と比較して、加齢による衰えが、5~10年遅くなった「若返り」現象がみられました。世論調査でも、70歳以上を高齢者と考えると言う意見が多かったそうです。

そうは言っても、寄る年波には勝てませんから、身体が次第に弱っていくのは避けようがありません。「要介護」状態に陥る原因としては、第一位が「認知症」、「脳卒中」、「高齢による衰弱」、「転倒・骨折」、「関節疾患」と続きます。脳卒中のように、突然、健康寿命が終わってしまう場合もありますが、「いくつかの病気が重なって、次第に不調がつのり、だんだん要介護になっていく」という場合が多いと思います。

「要介護」の前段階と言える心身の弱った状態をフレイル(脆弱・もろい)と言います。フレイルには、三つのタイプがあります。①加齢と運動不足で、筋力が衰えて転倒しやすくなる「身体的フレイル」。②うつ病や認知症による「精神・心理的フレイル」。そして、③社会的問題等で、引きこもり、ストレスに弱くなった「社会的フレイル」です。

身体的フレイルのチェックは、体力テストです。世界17ヶ国15万人を4年間追跡調査した結果では、握力の弱い人で死亡リスクが大きくなるそうです。握力が5㎏低下する毎に死亡リスクが16%上昇すると言うことです。握力計がなければ、簡単にできるのは、開眼片足立ち検査でしょう。目を開けて、片方の足で立ちます。挙げた足を着いたり、ケンケンしたりすると終了です。2回やって、良い方が自分の記録です。65歳の平均は、50秒です。足の筋力とバランスを同時にテストできます。握力も片足立ちの時間も、トレーニングで変えられます。自分の未来や寿命を変えられるのかもしれないのです。まずは、けがをしないように、周りを片付けて、片足立ちしてみてください。


Text by 榊原循環器科内科クリニック 榊原 亨( 2021年7月19日 「北海道新聞夕刊」掲載)

健診のススメ

内科2021/12/15

コロナの影響で、昨年は、職場の健康診断や、特定検診、または、定期的に受けていた検査が延期や中止になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特定検診は、指定された病院やクリニックで、国民健康保険に加入されている40歳以上の方であれば、無料で受けることができます。

健康診断で必ず行われる身長・体重測定。そこから「BMI」を計算することができます。

「BMI」とは、成人の肥満や低体重の指標です。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

厚生労働省では、BMIの目標値を、18歳~49歳で18.5~24.9、50歳~64歳で20.0~24.9、65歳歳以上、21.5~24.9と定めています。

日本人での平均寿命を調査したデータでは、最も寿命が短いのが18.5未満のやせ型の人であったという発表もあります。もちろん、肥満は生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)のリスクが高まりますので注意が必要ですが、やせすぎも問題になりますので食事や生活習慣を見直すことも大切です。

人間の身体は、体内で起こっている変化をなるべく表に出さないようにする性質があります。これを「ホメオスターシス(恒常性の維持)」といいます。身体の様々な臓器の変化も、初期の状態では、身体のホメオスターシスが働き、症状を感じることはありません。症状が出てきたということは、症状が隠し切れない程、病状が進んでいる可能性があるということです。

がんの治療で、最も大切なことは、「早期発見・早期治療」です。そして、早期発見のためには、症状が何もない時こそ、健康診断を受けておくことが大切です。

最近でも、自覚症状のない芸能人の方たちが、テレビの特番での健診で、がんや様々な病気の早期発見をされて無事に早期に治療に進めたというニュースもありました。

確かに、レントゲンや採血だけで、病気の全てが見つけられるわけではありません。

しかし正常範囲であっても、昨年よりは悪化していたりすることで、次回の検査まで、生活習慣の改善を考慮するきっかけとなるでしょう。

また、普段、定期通院されていない方も、健康診断の医師との問診時に、日頃気になっている症状を相談することによって、不安が解消されたり、隠れていた病気を見つけることができるかもしれません。


Text by 鈴木内科外科クリニック 大原 眞理子( 2021年6月21日 「北海道新聞夕刊」掲載)

腸内細菌のお話

内科2021/12/15

ヒトの腸の中には、100兆個の細菌が生きています。重さでいうと1㎏あります。いろいろな菌がいるのですが、野原によって生えている草花が違うように、ヒトによって腸内の細菌は種類が違います。「どんな菌が多いか」で、くさむらの特徴が決まるため、腸内細菌叢(ソウ=くさむら)と呼びます。便の中には、多くの種類の菌がいますが、乳酸菌、大腸菌、ビフィズス菌は、腸にいる有名な菌です。

腸内細菌は、人間に寄生しているだけではなく、人体が作れない必須アミノ酸(タンパク質のもと)やビタミンを作って、栄養を与えてくれています。また、糖尿病・メタボリックシンドロームにおいても、腸内細菌が重要な役割を果たしていることがわかってきました。炎症やがんの発症に関係している菌もいます。狭心症の人では、バクテロイデス菌が減っているという報告があります。この菌は、肥満や認知症の人で減少しているとも言われています。

病気を良くするタイプの菌を植え付けたり、善玉菌が産生する良い物質を薬のように作ったりすることは、将来、可能になるかもしれません。それまで、今できる体に良いことは、善玉菌を増やすように努力することです。腸内細菌叢の2割が善玉菌、1割が悪玉菌、7割が日和見(ひよりみ)菌と言われています。日和見菌が悪玉になったりして、善悪のバランスが変化します。なるべく善玉菌が多くなるように増やしたいものです。

善玉菌を増やす食品は、食物繊維、植物性タンパク質、野菜果物、母乳などです。赤ちゃんが3歳になるまでの間に、母乳、兄弟の有無、住んでいる地域などの影響を受けながら、安定した腸内細菌叢のタイプが出来上がります。そうした中で、できるだけ、日和見菌を善玉に変身させたいので、納豆や根菜などを食べるとよいようです。反対に、悪玉菌を増やすのは、高脂肪食、動物性タンパク質、糖分、塩分、ストレスなどです。参考にしていただけると幸いです。


Text by 榊原循環器科内科クリニック 榊原 亨( 2021年6月21日 「北海道新聞夕刊」掲載)

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