知らないと損をする介護保険
先日、父の介護をしていた母が倒れました。
元気な母と思っていましたが今年で80歳、介護疲れがたまってのことでした。
搬送先の病院の配慮で、父も母の体調が回復するまで入院させていただき、二人そろって退院することができました。
恥ずかしながら、訪問看護師の私は「大丈夫」と話していた母の言葉をうのみにし介護保険の申請をしていなく、慌てて申請した次第です。
「転ばぬ先の杖」ではありませんが、「転ばぬ先の介護保険」です。
介護保険は住み慣れた自宅で療養生活を送るため、介護する人の負担を軽くするために作られた制度です。
いろいろなサービスがありますが、訪問看護では健康管理や薬の管理の他、点滴や経管栄養等も行います。
夜間でも心配なことがあれば相談を受けたり、自宅に訪問するサービスもあります。
まずはお近くの包括支援センターや支所にご相談ください。
訪問介護の役割
訪問介護は自分や家族だけでは日常生活を営む事が困難になった高齢者に対して、可能な限り自宅で自立した生活ができるよう、日常生活上の支援をするサービスです。
掃除や調理などの生活援助や排せつや入浴などの身体介護、通院などを目的とした移乗・移送のサービスがあります。
あくまでも、できない事を支援することが基本であるため、ご家族への支援や日常的な家事の範囲を超える支援はできません。
できるだけ自分の家で自分らしく生活したいということは誰もが望んでいる事でしょう。
訪問介護では、ただ、生活上の援助をするだけではなく、自分らしさを尊重しながら支援していくことが重要な役割となっております。
核家族化がすすみ、また、女性の就労が増えている現在において、その役割はますます大きくなるものと考えられます。
ケアマネジャーの役割
ケアマネジャーは、ご利用者が入院した時、病院へ出向き家族構成や生活歴、既往歴、身体状態、現在使用している介護保険サービスについてなどの情報提供を行う事や、病院で開催されるカンファレンスへ参加するなど医療との関わりを積極的に行っています。
なぜこのような関わりが必要であるかと言うと、今後の治療方針や退院支援などの方向性がスムーズになり、なによりも、ご利用者のQOL(Quality of life=クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の確保を行い退院後も安心・快適な生活を送ることができるようにするためです。
医療と介護の懸け橋役となっているのがケアマネジャーです。
事故や病気で入院し今後、誰かの介護や支援が必要と言われた際には、ケアマネジャーへご相談ください。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護制度
「施設から在宅へ」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか?
今後、ますます在宅での介護の重要性が増していくと考えられますが、介護度が高くなればなるほど、1日を通して何回も支援が必要となり、従来の訪問介護制度では対応しきれない部分があります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間を通して1日複数回の定期的な巡回と必要時にコールをして対応する随時対応で要介護高齢者の安心と安全を守るサービスです。
利用料は介護度別に月々一定額に設定されており、安否確認等の短時間の訪問も可能な為、その方に合った臨機応変なサービスを行う事ができます。
ただし、要支援1・2の方はこのサービスを利用することはできません。
利用に際しては、担当のケアマネージャーにご相談下さい。
デイサービス、デイケアの違いについて
デイサービスはデイサービスセンターや特別養護老人ホームなどに通って、入浴、食事、機能訓練、レクリエーションを行います。
特に家にこもりがちな方は、他の利用者との交流により、気分転換を図ることができますし、家で介護されているご家族にとっても日中に自由な時間を作ることができます。
デイケアは介護老人保健施設や病院などに通って、主治医の指示を受けた専門スタッフが理学療法、作業療法、言語聴覚療法などのリハビリテーションを行います。
心身機能の維持回復、排せつや入浴をはじめとする日常生活をできるだけ自分で行えるようにするためであり、機能訓練が必要な方に適しています。
ただし、最近では入浴や食事のないリハビリに特化したデイサービスもありますので、利用される方は担当のケアマネージャーとよく相談をしてご利用ください。
「サービス付き高齢者専用住宅」と「有料老人ホーム」の違いについて
サービス付き高齢者専用住宅は、専門のケアスタッフによる安否確認や生活相談サービスが義務付けられている高齢者のための賃貸住宅です。
入居者が疾病や事故などで介護が必要となった場合はケアマネジャーへ相談しそれぞれのニーズに合った介護保険サービス(居宅介護サービス)を受けることが可能です。
有料老人ホームは、日常生活を営む上で必要な食事、入浴、排せつ、家事、健康管理などの支援が義務づけられている施設です。
健康型、住宅型、介護付と大きく特徴が分かれており身体状況に応じて介護サービスが提供されます。
両施設ともに特徴や利用料金等に違いがありますので、利用をご希望の方は事前にケアマネージャーにご相談することをお勧めします。
地域包括ケアシステムについて
地域包括ケアシステムをご存知ですか?
これは、「重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らせるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供されるシステム」のことです。
少し前の時代では、家族が介護をしていたため、自宅で亡くなる方が大半だったと思います。
現在は、介護サービスが充実しているため、介護の全般を家族がしなくてもよいわけですが、不安はありますよね?
そこで、不安を少なくする方法のひとつとして、入院から自宅介護に切替える際、退院前にケアマネージャーとともに訪問看護師にもご相談ください。
病院まで伺い安心して退院できるよう環境を整え、必要なサービスの提供をアドバイスすることができます。
医療ケアや、体調に不安のある場合は、私たち訪問看護師が主治医の指示のもとご自宅まで訪問しサービスを提供いたします。
心配はあるかもしれませんが、やっぱり自分の家はいいものですよ。
自宅での介護を少し考えてみませんか?
医療・介護・福祉の包括的サービスの展開
2025年問題という言葉をご存知でしょうか?
団塊の世代が25年には75歳となり超高齢化社会が到来するといわれています。
国では様々な施策を検討していますが、重要となるのが「医療・介護・福祉が連携した包括的サービスの提供」です。
高齢者の方が住み慣れた地域で安心した生活を送るためには、病院や診療所が病気の治療や病状急変時に外来診療や入院治療、訪問診療を担当し、介護保険サービスが日々の生活を送る上での支援を担当していくというものです。
24時間365日の介護保険サービスを提供するため、ケアプランセンターを始めとした訪問看護ステーション・ヘルパーステーション・定期巡回ステーション・デイサービスセンター等の事業所が連携して切れ目のないサービス提供体制を構築し、利用者の個性やニーズに応じていくことが求められています。
胃ろう(PEG)について
高齢化社会を迎え、嚥下障害などにより、食事摂取が困難な方や、誤嚥を繰り返したことにより肺炎(誤嚥性肺炎)を繰り返される方が最近増加していることが実感されます。
いろいろ工夫され、嚥下食の改善、経管栄養、補液の補助などさまざまな試みがなされております。
これらの治療後、どうしてもうまくいかないなどの理由で、胃ろうの造設を依頼されることがあります。
胃ろうは体表から胃内に直接栄養を送り込むための入り口を、腹部に設けるものです。
通常は内視鏡を胃内に挿入したうえで、体表から穿刺したうえで、造設いたします。
合併症には出血、腸管損傷による腹膜炎、術後感染などが報告されており、栄養状態や全身状態の悪い方に行うので慎重に施行する必要もあります。
最近はいろいろ新聞やTVなどでも胃ろうの功罪についての記事や特集を目にします。
胃ろうを他院で造設したが、1回も使わなかったので抜いてほしいとの相談も受けました。
介護施設の入所のために、胃ろう造設が要件であったり、社会的な面で要求されることも増えてきております。
患者さんは判断できない場合が多いですので、ご家族が十分検討、考慮したうえで造設するかどうかを決めていただきたいと思います。
自宅で介護するということ ~訪問介護を利用しましょう~
「やっぱり家はいいなあ。」「連れて帰ってきて良かった。」と自宅で療養生活をしている皆さんからよく聞かれる言葉です。
訪問看護は赤ちゃんからお年寄りまで年齢に関係なく利用できます。
病気や障害を持った人が、住み慣れた地域や家庭でその人らしく療養生活が送れるように、私たちが『生活の場』へ訪問し、看護ケアを提供し、自立を促し、療養生活を支援します。
夜間も心配なことがあれば相談や自宅に訪問するサービスもあります。
家族や一人だけで介護できない、退院なんて不安で困ると思ったらまず、医師や近くの包括センター、ケアマネジャーに相談し訪問看護サービスを受けたいと話してください。
安心して自分らしい生活が送れるお手伝いをします。