進学、就職を控える高校3年生へ
高校3年生の皆さん、就職される人は希望する会社に決まりましたか?進学される人はこれからが頑張りどころですのでインフルエンザに負けずに勉強に励んでください。就職進学にあたり、必要な予防接種は済みましたか?まずはMR(麻しん・風しん混合ワクチン)です。
日本から麻しんをなくすため、また風しんの流行を阻止するため、2年前から5年間限定で18歳のあなた方に無料で接種しています。
麻しんはワクチンでしっかり予防できる病気の中では一番怖い病気と言っても過言ではありません。
麻しんにかかったときに脳炎になり一生意識が戻らなかったり、病気になって10年以上たってから意識障害やけいれんで命を落したりする場合もあります。
1歳の頃に1度だけの接種では麻しんの発症を防ぐことはできません。
接種は3月までですので、まだの人は市町村にお尋ねください。女の人は、子宮頚(けい)がん予防ワクチンを是非しましょう。
いま、20代の若い女性に子宮頸がんで命を落としている人が増えています。
子宮頸がんはパピローマウイルスがその発症に深く関わっていることそしてワクチンと子宮頸がん検診を行うことで100%近くの頸がんが予防できることが分かっています。
3回の接種で5万円近くかかりますが、あなたの命を守るためには必要なワクチンです。本州方面に就職進学する人は、日本脳炎の予防接種をしましょう。
北海道に住んでいる限りは日本脳炎のワクチンは必要ではありませんが、道外では定期接種として、日本脳炎のワクチンを全員が接種しています。
日本脳炎は最初の症状は風邪と同じですが、その後けいれんなどの症状が出る治療の難しい病気です。
初回の免疫には1ヶ月の間をおいて2回と1年後に1回の計3回の接種が必要です。
今から始めて、来年に帰省した時に追加を行うといいでしょう。最後はインフルエンザです。
今年すでにA香港型の流行が見られています。
通常は1回の接種で十分ですが、受験生には2回の接種で万全を期すことを勧めています。
食中毒の季節
食中毒の季節です。
7〜9月は、1年のうちでも細菌性の食中毒発生件数がピークとなります。
食品についた病原性の細菌は増殖しても、食品の色、味、においなどには変化がないので、知らずに食べると腹痛、嘔吐(おうと)、下痢、発熱、血便などの症状を起こします。
食中毒は細菌の他に化学物質や自然毒、ウイルスなども原因となりますが細菌によるものが多いので『食中毒=細菌』のイメージになっていると思います。 予防には、手洗いの励行、調理でしっかり火を通す、調理器具の消毒などが大切です。 WHO(世界保健機関)食品安全部で呼びかけている『手を洗わなければならないとき』を以下にご紹介しますので面倒くさがらずに行うことで食中毒の発生を減らしましょう。
- 食品を取り扱う前、調理中も頻繁に
- 食事前
- トイレに行った後
- 生肉に触った後
- 赤ちゃんのおむつを換えた後
- 鼻をかんだ後
- 喫煙した後
- ゴミを処理した後
- 化学薬品を使用した後(洗浄目的のものも含む)
- ペットと遊んだ後
その検査MRI?
CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)の検査を受けられたことがありますか?
これらの検査は機械の進歩や普及によって、だいぶ気軽に受けられるようになりました。ですが、患者さんにお聞きすると、それがCTだったのかMRIだったのかわからない、とおっしゃる方が少なからずおられます。過去にどのような検査を受けたか、ということは日常診療上、時に重要な情報となり得ますので、CT、MRIの簡単な区別の仕方をお話ししましょう。 機械の外見は、経験のある方はだいたい「大きな釜のような機械」と表現されます。正面から見ると両手を広げたくらいの大きな機械の中心に丸い穴があって、ここに患者さんが入っていきます。ドーナツの中に入っていくような感じがしたらCTです。ちくわの中に入っていく感じだったらMRIです。MRIのなかにはサンドイッチの中身になったような感じになる機械もあります。
また、検査中、トントントン、ドガガガガガ、ブィーン、ブィーンと言ったような、工事現場にいるような大きな音がしたらMRIです。耳栓やヘッドホンなどで、音をやわらげるようにしているのですが、やはり聞こえます。CTではモーターの音と、X線がでるときにピピピピという音がするくらいで、耳栓の必要性はありません。このところの技術革新で、音がかなり小さくなったMRIが出現しましたが、これはまだそれほど普及していません。
他にもいろいろ区別の方法があるのですが、紙幅の関係上全てを紹介できません。それでもこの外見と音で大部分は区別できると思います。
蛇足ですが、MRI検査では金属、磁気カードなどを検査室に持っていってはいけません。時計は狂い、クレジットカードは使用不能になります。当然、ペースメーカーの患者さんは検査自体が受けられません。
医療被曝(ひばく)について
先日、日本では診断用X線によってガンが3・2%増える可能性があるという論文が発表され、様々なメディアで報道されました。要するに、被曝するとガンが増える。これは広島、長崎、チェルノブイリなどからも明らかで、日本ではX線やCTスキャンでの検査数が世界でも飛び抜けて多いので、ガンが増えるでしょう、ということのようです。我が国ではメディア報道に過剰な反応をすることがしばしばあるので、もし患者さんが治療方針決定に必要なX線検査にまで同意してもらえなかったらどうしよう、と思っていましたが、特にそのようなことはありませんでした。
放射線の影響には、ある線量以上照射されなければ起きないもの(確定的影響と言い、皮膚炎、不妊、白内障などがあります)と、照射される線量に比例して発生確率が増すもの(確率的影響と言い、放射線誘発ガンがあります)があり、確定的影響についてはわかっていて、最も軽い初期紅斑(皮膚がほんのり紅くなること)でも胸のレントゲン写真で連続六千回以上、CTでも連続百回以上とらなければ起こりません(おそらく機械が先に壊れるでしょう)。最初にあげた論文は確率的影響について研究されたもので、それについては残念ながら詳細はわかっていません。しかし、皆さんが受けられるX線検査は病気の早期発見と適切な治療のために必要なもので、例えば1センチの肺ガンはX線検査でなければ発見不可能で、打診聴診触診ではまずわかりません。このように被曝というリスクを払っても治療のために得られる利益が多いという判断のもとに検査は行われているのです。ですが、いくら利益が勝るからといって、被曝線量軽減への努力は怠ってはならず、医療機関のみならず医療機器メーカーも一体となって、質を落とさず線量を落とす工夫をしています。
皆さん、どうぞ主治医の先生を信じて今後もX線検査を受けていただきたいと思います。