口腔乾燥症
最近口の中が渇くな、と思ったことはないでしょうか?
近年8020運動(年齢を重ねても歯を残しましょうという運動)の他に、口腔機能の衰えに関するオーラルフレイルや口腔機能低下症といったものが注目されるようになってきました。その中の一つに口腔乾燥症があります。
口腔乾燥症は、その名の通り口の中が渇く症状を表しています。夜眠っている間に口の中が渇き目覚めてしまう、食事をするときに唾が出ないため咀嚼がうまくいかない、口の中が乾いてヒリヒリする、食事のたびに口の粘膜が染みて痛いなど、多様な症状を呈します。
唾液は、耳下腺・顎下腺・舌下腺といった大きな器官の他に、口腔内に無数に散らばる小唾液腺といわれる器官から作られています。何らかの影響で、これらの器官が機能低下を起こしたとき、唾液量が減少し口腔乾燥症を発症します。この原因にはさまざまなものがあり、その原因に対応することで口腔乾燥症が改善することがあります。
例えば、加齢などに伴い唾液腺の機能が低下している場合には、機能を回復させるリハビリが必要であり、有名なものに唾液腺マッサージなどがあります。その他にも、薬で唾液腺の機能を回復させる方法などもあります。
また、薬の副作用の可能性もあります。高血圧、睡眠薬、抗アレルギー薬などさまざまな薬の副作用として口腔乾燥があります。それらの薬を内服されている方で口渇感がある方は、主治医の先生に相談することをお勧めします。
そのほか、口腔カンジタ症、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患や、口を開けて眠るなどの習癖、ストレスなど多岐にわたります。 正しい原因の把握、治療、ケアなどで症状が改善することも多くあります。
気になる方は当院歯科口腔外科にも口の痛み・違和感外来がありますので、お気軽に相談していただければと思います。
老衰の躍進
厚生労働省が今年6月に発表した2018年の人口動態統計の結果、死因の1位、2位はこれまで同様がんと心疾患でしたが、老衰が脳血管疾患を抜いて初の3位となりました。死亡診断書上の死因として老衰は、ここ10年ほど右肩上がりで上昇し続けています。
この上昇については、近年策定された肺炎診療ガイドラインの影響で、加齢による衰弱状態で誤嚥性肺炎などをおこして死亡した場合の死因を肺炎ではなく老衰とする医師が増加していることも一因とみられています。とはいえ、特別な病気で死亡するのではなく生物学的な寿命ともいえる老衰で人生を終える方が増えているのは間違いないでしょう。
「天寿を全うする」とか「大往生」などと例えられることが多い老衰死は、生の終わり方としては望ましい形と言えます。意外なことに、時代をさかのぼると戦前の方がむしろ老衰による死亡率は高かったようです。これは平均寿命が短かかったからに他ならず、がんや心疾患などを発症して直接死因として亡くなる前に老衰で亡くなってしまう人が多かったということです。寿命の延長とともに今度は高齢者に多く発症する致死的な病気が増加してきたわけですが、今後の医療の進歩とともに病死が減っていけば老衰死の比率はより一層高まっていくことになります。
今や世界に冠たる長寿大国である日本ですが、明治時代の平均寿命は男性42.8歳、女性は44.3歳でした。内閣府公表の高齢社会白書「平均寿命の将来推計」によると平均寿命は今後も延びると予想され、2060年には男性は84.19歳に、女性は90.93歳になるとされています。また昨年の集計では100歳以上の高齢者の方は国内に約7万人もいらっしゃいます。人間は一体何歳まで生きれるようになるのか? タイムマシンがあるなら遠い未来まで確かめに行きたいところです。
お薬の管理について
お薬の管理はどのようにしていますか?
長期にわたり通院や複数の医療機関に通院している方は、お薬の種類も多くなりがちです。
通院がなかなかできないから、とたくさん処方してもらって、たくさんのお薬が残っていませんか?
お薬の中には湿度が高い状態を苦手にしているものもあります。自宅での長期間の保管はお薬の性状を変える可能性もあります。
一度残っているお薬を確認してみてください。
また、医療機関を受診する際は「お薬手帳」を必ず持参してください。
お薬の重複やよくない飲み合わせを未然に防止でき、より安全にお薬を処方することができます。
この「お薬手帳」にはドラッグストア等で購入した一般用医薬品や健康食品なども、自分で記載しておくと受診時に、よくないお薬の組み合わせや食べ合わせが思いがけず見つかることがあります。
「お薬手帳」は、いつも携帯してください。
旅行先で病気になった時や災害時に避難した時、また救急外来を受診した時などに飲んでいるお薬を正確に伝えられます。
また飲んでいるすべてのお薬を「1冊に」記録することが大切です。
病院ごと薬局ごとで別々に「お薬手帳」をもらっている方は、一冊にまとめましょう。
お薬の管理が難しく、飲み忘れや、飲んだことを忘れて2回服用してしまうことはありませんか。
また、きちんと内服できていても、毎日の管理が大変と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
お薬の管理が自分で困難な場合は、薬剤師がご自宅に訪問してお薬の設置支援を行うことも可能ですし、介護サービスをうまく利用して服薬介助を受けることも可能です。
また処方日数や剤型等の変更が可能なことがありますので、まずは主治医に相談してみてださい。
インターバル速歩で健康増進!!
今年の函館は雪が多く外出の機会を奪われてしまった方も多かったのではないでしょうか。
そんな雪もすっかり解け、外出やウォーキングを楽しむのに気持ちの良い季節になってきました。
そこで今回は、通常のウォーキングに比べ効率よく肥満解消、筋力アップ、高血糖や高血圧の改善につながると言われている「インターバル速歩」をご紹介したいと思います。「インターバル速歩」とは、信州大学大学院学系研究科の能勢博教授が提唱しているウォーキング方法です。
お仕事が忙しくなかなか運動に時間がさけないという方、毎年ウォーキングをしているけれどなかなかダイエット効果が表れないという方、ぜひ「インターバル速歩」に挑戦してみてください。
◎「インターバル速歩」の実践方法
①早歩き(3分)ゆっくり歩き(3分)を1セットとして5セット繰り返します。
②週4回以上合計120分以上を目標に行なってみてください。
③しっかり効果を得るためには正しい姿勢で行なうことが大切。胸を張って大きく腕を動かします。前に振り出すことより後ろに軽く引くことを意識してみてください。
早歩きの速さの目安は「その人の体力や年齢によって変わってきますが、『ややきつい』と感じる程度がよいでしょう」(能勢教授)。
3〜5分歩いたら少し息が弾む程度、また誰かと一緒に歩くのならば、会話ができるくらいのペースがひとつの目安となります。
最初3分の早歩きはきつすぎると感じる方は1分または2分のインターバルからスタートしてみてください。
◎屋外歩行は自信がないという方にはこんな方法も!!
屋外歩行が困難な方やちょっと自信がないという方は、お家の中で「インターバル足踏み」から実践してみてはいかがでしょう!!
実践方法は同じです。早いリズムでの足踏み(3分)と、ゆっくりした足踏み(3分)を交互に繰り返してみてください。
足踏みでもちょっとバランスを崩してしまいそうという方は、椅子に座っての足踏みでもOKです。
皆さんそれぞれ方法やペースでぜひ実践してみてください。
2週間の継続で体重減少しはじめ、5か月の継続で筋力・持久力が10%向上し、高血圧、高血糖、肥満の症状が20%改善すると言われています。
継続は力なりですね。
骨盤底筋のリハビリで尿もれ・尿失禁を予防!!
「年のせい」とあきらめたり、人には相談できない・・・と悩んでいる方は意外と多いのではないでしょうか。健康な女性でも尿失禁の罹患率は10〜46%と報告されています。最近では産後のケアのひとつとして骨盤底筋のトレーニングが注目されるようになりましたが、まだまだ一般的に普及しているとはいえません。欧米諸国ではすでに一般的で、その中でもとりわけ意識の高いフランスのパリジェンヌ達は出産後の骨盤底筋のリハビリは常識とまで言われています。
今回はそんな骨盤底筋の訓練方法を紹介させていただきます。排尿障害の中でも、腹圧性尿失禁には骨盤底筋のトレーニングが効果的と言われています。くしゃみや咳をした際に「あ!!」と思うことのある方、走る、飛ぶなどの運動をした際に「あ!!」と思った経験のある方はぜひ実践してみてください。
《骨盤底筋リハビリのポイント》
[1]骨盤底筋がどこにあるかを確認しよう
おならを我慢、トイレに行きたいのを我慢するイメージで肛門、尿道をきゅっとしめてみてください。その時に動いた筋肉が骨盤底筋です。
[2]色々なバリエーションがありますが、今回は仰向けで寝ながらできる運動を紹介します(参考+引用:理学療法士協会作成のパンフレット)
①仰向けに寝て足を肩幅くらいに開き膝を軽く曲げる。
②身体の力を抜いて、おへその下に意識を持つようにしながら肛門(や膣)を5秒間締める。
③これを10〜20回繰り返す。
これを1日に3〜4回程度繰り返します。
リハビリによって効果が実感できるのは2〜3カ月かかると言われています。即効性がないため、モチベーションが上がらず継続することがなかなか難しいですが、さやるぞというよりも何かをしながら、テレビを見ながら、朝起きる時や夜布団に入った時など、生活のリズムの中に上手に取り入れながら継続してみてください。
リハビリのコツ?
先日、もうすぐ還暦の親しい医師(A氏とします)が椎間板ヘルニアの顕微鏡を用いた手術を受け、今もリハビリと格闘しています。その様子を見聞きしながら、脊椎の病気のリハビリのコツ(?)を考えてみました。
手術直後は、術前とは見違えるような調子の良さで、手術の効果に感心しました。しかし、医者が患者になると、なまじ知識があるため、最低の患者になるといいます。A氏の場合、リハビリのために入院期間を少し延ば
すよう勧められましたが、早く診療に戻りたいと、術後4日で退院、復職しました。
通常、脊椎の手術では術後に、背中の安静を保つためにコルセットなどを使用しますが、背中の固定により筋力が低下し、体も硬くなります。A氏も、コルセットを着けていた間は絶好調でしたが、1カ月後にコルセットを緩め始めたところ、腰を中心に体幹の筋肉が衰え、足が上げられず靴下も履けなくなりました。手術直後の好調さは消え、悪戦苦闘することとなりました。そばで見ていても、僅かな期間で体力が衰えることに驚きました。ご高齢の方なら、もっと弱ったでしょう。
さて、A氏の療養生活から気づいたリハビリの注意点は以下の4点です。
①主治医や理学療法士の指示をよく聞く(我流は禁物)
A氏は退院する際に、理学療法士からリハビリのメニューや注意を書いたものを渡されましたが、十分に利用しませんでした。
②焦らない
「過ぎたるは及ばざるが如し」で、回復を焦って強すぎる運動をすると、病気の再発の危険性が高くなる上、いわゆる「揉み返し」による余計な筋肉痛や関節痛が回復の邪魔をします。
③3歩進んで2歩下がる
回復の道は長く、真っ直ぐではありません。小さな尾根を上り下りしながら頂上にたどりつくイメージです。
④気長に毎日続ける
前二つと通じますが、「千里の道も1歩から始まること」を信じて、継続することが大事です。「365歩のマーチ」の歌詞みたいですが、結局、リハビリに近道はないのです。
災害に備える、病気に備える
「喉元過ぎれば、熱さ忘れる」。
あの未曾有の犠牲者を出した震災から5年が経ちました。
さまざまな反省から防災、減災対策が提案されているようですが、皆さん、災害への備えは出来ていますか?
さて、10年ほど前から、「病気」を一つの「災害」に見立てて、「ハザードマップを作る」ことにならい、健康状態チェックを勧めていましたが、日常診療の場では、初診患者さんの中に、健康診断で異常を指摘されていたのに、何の手も打たずにいる方が大勢います。
自分の体に危ないところが見つかったのに放置している姿に、5年前の震災での一連の出来事を連想するのは飛躍していると思われるかもしれませんが、危険性に目をつぶり、対策を怠ったために被害を拡大させた、「考えの構造」は同じではないでしょうか?
また、「自分は、今まで病気などしたことがない」という方もよくいます。
それは、病気にかかったことがないのではなく、病気であることを知らずにいただけのことだと思います。
たとえば、血圧が高くても自覚症状はありませんから、自分では健康だと思っているのですが、何かのキッカケで高血圧を指摘されてビックリするというパターンはよくあります。
こういう「病気知らず」の方に、特定健診をお勧めします。
40歳以上の方が対象で、はやりの「メタボ」のチェックを中心としたものですが、健康状態をみる目安として十分だと思います。
また、何か病気を治療している方は、かかりつけのお医者さんに、治療中の病気以外の項目のチェックもお願いして見るといいでしょう。
検査の経済的な負担が心配かもしれませんが、特定健診には、健康保険から補助が出ますので、ご自分の負担は大きくありません。
自分に都合の悪い事実を知ることは怖いものですが、昔から「災いは忘れた頃にやって来る」といわれています。
震災から5年の今年、健康診断で自分の健康「ハザードマップ」を作り、対策を検討して「防災」に努めてはいかがでしょうか?
訪問看護師のお仕事をご紹介します
訪問看護師をご存知ですか。 私たちはご自宅に訪問して、健康管理(血圧脈拍の測定)、身体の清潔(入浴介助、清拭など)、医療器具の管理(吸引、吸入、胃ろう、人工肛門、人工呼吸器、チューブ類のケアと相談)、床ずれの予防・手当、日常生活の介助・介護予防(リハビリ)、内服管理、介護相談・アドバイス、ターミナルケアなどを行っています。 ご本人、ご家族の希望に合わせ「住み慣れた自宅や地域で安心して療養生活を送れるよう」専門的な知識と技術で看護サービスを提供し療養のためのお手伝いをしています。 ご相談がありましたら、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、主治医またはお近くの訪問看護ステーションに電話してみてください。
飲み過ぎ用心!
新年度も始まって歓迎会やお花見などでお酒を飲む機会が増えますが、アルコールによる事故の話題も散見されます。アルコールには脳を麻痺させる作用があります。気分がよくなったり陽気になったりするのもこのためですが、度が過ぎると意識がなくなったり、呼吸が止まったりすることもあるのです。酔っぱらって意識がなくなっているときは、吐いたものを誤って飲むことで窒息する危険もあります。仰向けよりも横向きに寝かせた方が窒息のリスクを防げます。ぐったりしていたり、呼吸の様子がおかしくなったりしているようなら、すぐに救急車を呼んで病院に運んだほうが良いでしょう。常に誰かが側にいて観察していることも大事です。もっとも、そのような事態にならないように、短時間に多量に飲酒するようなことはやめた方がよいでしょう。
危機を乗り越えて
いつもいろいろな方たちに病気の予防の話をするとき、防災に例えてお話をすることがありますが、このたびの大地震にはただただ驚くばかりです。
しかし困難な状況、先の見えない暗闇に光明を見る思いがしています。「災害に遭おうとも驚かず、艱難(かんなん)に向かうとも悲しまず」。
陸別町の開拓に貢献した幕末の医師、関寛斎(せきかんさい)の言葉の一部です。
立派な言葉ですがなかなか実践は難しいでしょう。
そもそも生きることは、いつも新しい事態に対処していくことに他なりません。
誰でも「やりたいこと」「こうありたいと願う姿」などを持っていますが、現実に「できること」とはズレがあります。
人は絶えず自分自身または環境を変えたりしてそのズレを調整したり、身の丈に合わせて「できること」の範囲で生活する術を身につけていきます。
しかし老いるということ、病むということは新たな事態に対処する力が衰えるということです。
報道される被災地のご高齢の方たちの姿に、胸が痛みます。
このような出来事をキッカケに健康を害することは想像しやすいことですが、感染症など環境要因によるものだけでなく精神的な影響による大きな喪失感はさまざまな病気を引き起こします。
しかし困ったときに人の手を借りる、困っている人に手を貸すことが自然に行われる社会では、心のケアがよりやさしくなると想像します。
昨今老いることや病むことを忌むべきこととして、それらに目を背けるような気配が世の中にあるように思われていましたが、大変な苦労をされている被災地で大きな混乱もなく互いに助け合う様子を伝え聞くとこの国はまだまだ捨てたものではないと思い直すのです。この度は、東北地方を中心とした大地震災害に遭われた方々、ご遺族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。最後に、エイブラハム・リンカーンの言葉を送ります。
「あなたが倒れてしまったことはもうどうでもいいのです。私はあなたが立ち直ることに関心があるのです。」