口腔清掃不良の意外な落とし穴
歯に付いている白いもの、つまりプラーク(歯垢)。
これは主に口腔内細菌と食べ物の残りかすからできています。
この中にはミュータンス菌(Streptococcus mutans)と呼ばれる虫歯を引き起こす細菌が含まれています。
ミュータンス菌は非水溶性グルカン(歯面にくっつく接着剤のようなもの)を産生し、歯面に強く付着する能力を持ち、虫歯を発生させます。
その他にコラーゲン結合タンパクも保有し、血流に乗って心臓まで到達した後に心臓軟組織に付着して、感染性心内膜炎を起こす起炎菌としても知られています。
最近の研究報告では、ミュータンス菌がこのコラーゲン結合タンパクを保有することで、お口から入ったミュータンス菌が脳血管の傷ついたところにくっつき、局所的な炎症を起こし、また出血を止める役割である血小板の凝集阻害を起こして、脳出血を起こすのではないかと考えられています。
歯周病菌細菌が動脈硬化や糖尿病などと関連があるのは以前お伝えしてきましたが、歯周病に罹患していなくとも、口腔清掃を怠るとこういった虫歯菌は増えていくことになります。
このような細菌が重大疾病に関連があるのは驚くべきことです。
私たちは毎日ブラッシングを行い、また歯間ブラシやフロスなどの補助清掃器具を細かく上手に歯面に当て、お口の健康を保っています。
また、歯間ブラシやフロスなどの補助清掃器具を細かく上手に歯面に当て、お口の健康を保っています。
また、萌出したての乳歯や永久歯をもつ子どもにはフッ化物を用いることが有効となります。
しかし、歯科医院へ来院し、口腔清掃やフッ化物塗布などをしなくとも虫歯に罹患せず、いわゆる「歯医者いらず」の方もいらっしゃいます。
虫歯の罹患しやすさは歯質の強さや食習慣など個人差があります。
このような虫歯になりにくい方でも、ご自身で清掃できなかった部分を歯科医院でキレイにしてもらうことは、健康の維持に有益であると思われます。
歯科金属アレルギー
歯科治療では銀歯や入れ歯の金具等にいろいろな金属が使われます。
ネックレスやイヤリングや時計等でかぶれたりする方は金属アレルギーの可能性もあり注意が必要です。
口の中に入れた金属にアレルギーがあっても口の中がただれたりせずに、離れた部位の皮膚や粘膜に湿疹やかさぶたができる事があります。
原因である金属を取り除かなければ症状はなかなか治りません。
医療機関で検査をしてアレルギーがあると分かった金属は使わないようにする必要があります。
かわりにプラスチックやセラミック等の材料を使います。
これらは健康保険がきかない事が多いです。
今春の保険改正で歯科用金属にアレルギーがある方の大臼歯のプラスチック冠に保険がきくようになりました。
ただし医療機関との連携が条件になっています。
お困りの方は相談してみて下さい。
歯を白く保つために気をつけること
①ステイン沈着予防、除去効果のある歯磨剤(しまざい)を使用する。
②炭酸飲料や酸性の食品の過剰な摂取は注意。
③着色しやすい飲食物(コーヒー、紅茶、お茶、カレー、トマトソース、チョコレート、赤ワイン、合成着色料を使用した食品、キムチ、色の濃い果物)の摂取後は早めにブラッシングする。
④洗口剤に含まれるポピドンヨードやグルコン酸クロルヘキシジンは沈着しやすいので表記をみるようにしてから購入する。
⑤口腔(こうくう)内の乾燥は色が沈着しやすいので、唾液が出づらい方は歯科医師に相談する。
⑥歯科医院にて定期的に歯のクリーニングを行う。
上記の注意点を行っても、歯の黄ばみや色が気になる方は、ホワイトニングを行える歯科医院に相談してみて下さい。
口腔(こうくう)ケアについて
日本人に多い死因として、がん、心筋梗塞、脳卒中に次いで肺炎が挙げられます。
特に肺炎と気管支炎による死亡の9割は65歳以上の高齢者であるため肺炎は高齢者の健康管理にとって最も重要な課題です。
肺炎の中でも口の中の細菌などが肺に入って発症する誤嚥(ごえん)性肺炎の占める割合は高く、予防可能な疾患であるために口腔ケアは重要となります。
誤嚥性肺炎の原因として特に嫌気性菌が多く報告されます。
嫌気性菌は歯と歯茎の間の歯肉の部分に多く存在して歯周病が進行すると菌の増殖が認められます。
また舌の表面の舌背部にも繁殖するために歯のみだけではなく舌の汚れも取り除かなければなりません。
最近は訪問歯科治療もありますので寝たきりの方でも治療や口腔ケアが行えます。
気になる時は歯科医院に相談してみてくだい。
赤ちゃんの哺乳について
10カ月にも及ぶ長い妊娠期が終わって出産を無事に終えた後は、生まれてきた赤ちゃんが健康であることがお母さんの何よりの願いです。
オギャーと泣いて元気な子であることが分かるとお母さんの気持ちはホッとします。
そして、元気にお母さんの乳首を吸っている我が子の姿を見ると、大変だった妊娠期間を忘れさせてくれることと思います。
生まれたての赤ちゃんは健康であれば、お母さんのおっぱいを吸うことができます。
しかしこの当たり前に思える動作ですが、いつどこで覚えたのでしょうか?
おっぱいを吸う動作は思った以上に複雑なものです。
赤ちゃんは頬や口唇のあたりを刺激すると、刺激を受けた方向に口唇を向けて乳首を探し、口唇と舌を使ってお口の中に乳首を引っ張ってきます。
これらの動作は反射的に行っており、探索反射および口唇反射といわれております。
赤ちゃんの頬をお母さんの指で触ると、指をパクッとくわえることがあるかと思います。
この頃の赤ちゃんの上顎の口蓋は真ん中がくぼんでいて、乳首をとらえて吸うために適した形となっております。
舌を前後に動かし、乳首をしごいて乳汁を吸います。
これを吸啜(きゅうてつ)といいます。その後、乳汁を喉の奥(咽頭部)まで送って飲み込みます。
これを嚥下(えんげ)といいます。これらもまた反射により行われます。
これらの動作は、実はお母さんのお腹の中にいるときからみられるものです。
胎生8週頃には口の周りを触れる刺激を与えると、頭や体を刺激した方へ向ける動作を始め、胎生12週頃には嚥下運動、胎生24週頃には吸啜運動を行い始め、この後には自分の指を吸ったり、羊水を吸引していると考えられています。
赤ちゃんはお母さんのお腹にいるときから、おっぱいを吸う準備をして、頑張っています。
そう考えるとおっぱいを吸う赤ちゃんの姿は違う形で見えてくるかもしれません。
歯科における無痛治療について!
歯科治療を受けた経験のある方にとって、歯科治療中の痛みは「イヤ」なもので、歯科へ行こうと思っても、痛みを思い出すと足が向かない原因の一つでもあります。
現在、麻酔液の進歩や良い抗菌薬のおかげもあり、麻酔を行うことによって、痛みをほぼ感じずに治療できます。
しかし、その麻酔の注射自体が「痛い、怖い」という声を良く耳にします。
ここでは、痛みの少ない麻酔注射方法についてご紹介いたします。
①表面麻酔の使用(注射の前に、軟膏の様な物を1分くらい置くことで、除痛できます)、②麻酔液を適温に温める(体温近くまで温めることで、除痛できます)、③細い注射針の使用、④電動麻酔注入器の使用(麻酔液の注入する圧を軽減でき除痛できます)。
現代の歯科医院では、このように痛みが少なく、患者様が楽に麻酔できるように、種々の努力をしています。
ただ、今後行われる治療の説明など、医師と患者様とのコミュニケーションが良好なことが安心した治療を受けられる要因の一つでもあります。
歯科医院でも説明の努力はしていますが、何か不明な点や疑問点などあれば先生やスタッフに聞いていただき安心して治療を受けていただくことをお勧めいたします。
歯周病と全身の病気
歯周病菌は、肺炎、心臓病、糖尿病など、さまざまな病気と深く関わっていることがわかっています。
また、喫煙と糖尿病は歯周病の二大リスクともいわれ、禁煙が歯周病予防に役立ち、歯周病ケアが血糖値を下げやすくすることも明らかになっています。
たかが、「歯周病」と思わず、手遅れになる前に検診で歯周病予防のアドバイスを受けましょう。
そして、歯周病で歯を失うことのないよう定期健診を継続して、きれいなお口と健康な身体を維持しましょう。
デンタルリンス(液体ハミガキ)の活用
毎日しっかり歯みがきしているつもりでも、歯ブラシだけでは歯周病菌を含む歯垢(プラーク)を完全に取り除くことは困難です。
特に毛先の届かない歯と歯のすき間や歯周ポケットと言われる歯と歯肉のすき間は、なかなか手入れが行き届かないところで口臭や歯周病の原因となってしまいます。
普段の歯みがきとしてデンタルリンスと呼ばれる液体ハミガキを活用し、歯石の沈着や歯周病を予防される方も増えているようです。
近年、デンタルリンスも改良が加えられ、歯肉の血行を促し、炎症を抑える成分が入っていたり、また細菌効果や口臭の予防を期待できる成分が含まれるものもあります。
デンタルリンスも効果的に使用するには、適量を口に含み20~30秒間、歯と歯の間を通すようにすすぎ、歯ブラシでみがいてください。
就寝中は唾液の分泌量が減少し、口内細菌の繁殖が盛んになりますので、就寝前に使用し、出来るだけ細菌数を減らしておくことも効果的です。
口の渇きが気になったら
「最近、食べ物の味が感じられない」
「舌ががさついて痛い」
「ビスケットやパンが飲み込みにくい」
「口臭がする」
「ネバネバする」
「ニッコリ笑った時に口が戻りにくい」
「乾燥する感じが1ヵ月続く」
年を取るにつれ、唾液が出にくくなり、口の中の渇き悩んでいる人は少なくありません。
口の環境悪化は歯周病や虫歯のリスクを高まめるだけでなく、糖尿病など全身の病気にも関係していることが分かってきました。
唾液減少の原因は、加齢より生活習慣にあります。
口のうるおいを保つ生活習慣を身につけましょう。
口のうるおい保つ生活習慣
◎ 口の中を清潔に。柔らかめの歯ブラシで歯と舌をきれいに洗う
◎ 食事は良くかんで。暴飲暴食はしない
◎ 食事は楽しい仲間とリラックスして
◎ 口呼吸はせずに、鼻で呼吸するように心がけて
◎ 姿勢よく。前かがみにならない
◎ 適度な運動でストレス発散。1日20分ほど歩く
歯周病自己チェック □
□ 朝起きたときに、口の中がネバネバする。
□ 歯みがきの時に出血する。
□ 硬いものが噛みにくい。
□ 口臭が気になる。
□ 歯ぐきがときどき腫れる。
□ 歯ぐきが下がって、歯と歯の間にすきまができてきた。
□ 歯がグラグラする。
上記のような症状があったら、歯周病の可能性があり、歯科医院等で検査を受けてみる必要があります。